「さばきのアーティスト」「1秒間に1億3手読む男」と、棋士たちにはキラキラしたキャッチフレーズがあるなか、「『砂糖』のような甘い言葉で、『深夜』に君を寝かさない」と自己紹介するのは、個性的な棋士のなかでも異彩を放つ、佐藤紳哉六段(36)。

 

「4年くらい前から言い続けて、ようやく浸透してきました。イベントとかでサイン色紙でコレを書いてほしいと頼まれることもあるけど、長ったらしいから、ちょっと面倒なときもあります(笑)」

 

「とっつきにくい」「難しそう」「お堅い」という将棋の世界のイメージを払拭するかのように、佐藤六段は格闘技のマイクパフォーマンスのようなインタビューや、「カツラ」ネタで笑いをとる。有名なのが2年ほど前、棋界最高クラスで2日にわたって行われる「名人戦」の解説会。1日目、カツラをかぶった佐藤6段と、コンビの橋本崇載八段(31)との掛け合いだ。

 

橋本「このカツラをね、取りたかったんですね」

佐藤「これ『桂(けい・桂馬という駒)』って読むんです。名人戦だし、そのフリには乗りませんよ」

 

と言いつつ、2日目の解説会では、前日のカツラを取って登場。司会者が戸惑い気味に「ちょっと、昨日とは雰囲気が違うようですが……」と聞くと、「自然体の両者を見て、ボクも自然体にしました」と、してやったりの表情で笑いを巻き起こした。そんなお茶目な佐藤六段に、注目の“変”な棋士を紹介してもらった。

 

【加藤一二三(ひふみ)九段・74】

長いネクタイがトレードマークで、バラエティ番組でも『ひふみん』の愛称で人気。神武以来の天才と呼ばれ、かつては「名人」位も。「記録係が残り1分の持ち時間を読み上げるのに、『あと何分?』と聞いたりします。対局のお昼休憩に必ずうな重を食べることで有名ですが、驚くのは夜も食べること。敬虔なクリスチャンで、部屋から賛美歌が聞こえることもあります」

 

【豊川孝弘七段・47】

「『ひふみん』同様、バラエティ番組にも登場回数増加傾向。その秘密が解説などで連発するオヤジギャグ。「定番は、駒を両方狙える『両取り』をもじった『リョードリー・ヘプバーン』ですね。『駒の数がタランチュラ(足らない)』とかもあります」

 

【山崎隆之八段・33】

テレビ生中継中に、聞き手の矢内女流と次の一手を解説する際、「もし間違っていたら矢内さんをあきらめます」との“生告白”が話題に。「しゃべりもユニークで、大盤解説会などのイベントでもみんなを楽しませます」

 

【橋本崇載(たかのり)八段・31】

「ハッシー」の愛称で人気。金髪にホスト風いでたちで対局に登場したり、勝ったときにどや顔でカメラ目線を送るなど、楽しませてくれる棋士。いつも何かをしでかすため、まともにインタビューに答えると「普通でしたね」と逆に笑われることも。将棋普及のために「将棋バー」も経営している。「今はくるくるのパーマですが、『実験室で爆発したの?』って棋士の中でもざわついています」

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