NHKの朝ドラ『マッサン』で、妻のエリーは日本人になりきる努力をした。現代の外国人妻は自分の文化を生かしながら周りとぶつかり、新しいものを生み出す。そんなリアルマッサン夫婦を発見!

 

「着物にハサミを入れるときは、いつも『ごめんなさい!』と言います。大切にされてきた着物には、それだけの思いが込められていますからね」

 

カスリの着物をワンピースにリメークした自らの作品を慈しむように見ながら話すのは、ルーマニア出身のデザイナー・坪内シモナさん(32)。彼女が着物や帯を、ワンピースやコート、カバンなどに仕立てた作品は、日本の伝統とヨーロッパの感性が融合した新しいデザインとして話題を呼んでいる。

 

シモナさんが来日したのは’03年の春。日本に留学していた友人に誘われ、観光で訪れた。その滞在中に、伴侶となる建設会社勤務の貴行さん(36)と知り合う。父の反対を押し切って、’03年秋に再来日したときには、東京都府中市の貴行さんの実家で主婦として暮らし始めていた。

 

「毎朝6時に起きて、朝食を作って、掃除して洗濯をする毎日。文化の違いがストレスになったのか、少しづつ、自分の時間がないことに不満を感じるようになりました」

 

コンビニでバイトしていた彼女を変えたのは、義母のこんな提案だった。

 

「お母さんが自分の成人式で使った晴れ着と帯を持ってきて『これで洋服を作ったらおもしろいんじゃない』と言ってくれたんです。それはカワイイ花柄で、なかなかハサミを入れられませんでした。でもお母さんは『タンスの肥やしにしていても、シミが付くだけだから』と言ってくれたんです。その言葉がなかったら、仕事をしないで日本の文化のよさも美しさも知らないまま、もしかしたらルーマニアに帰っていたかもしれませんね」

 

ルーマニアでは服飾の仕事をしていた彼女は、タンスにしまうことも、洋服に再生して着てもらうことも同じ「大切」と気づき、それからビーズやレースを用いるなど独創的な作品を次々に発表。そんな彼女が語る言葉は、私たちが忘れかけた何かを思い出させてくれる。

 

「戦争中に着ていた着物や何度も修繕の跡がある着物をリメークするときは、その着物にどういう思いが込められているのか、しっかり聞いてから作業に入ります。どんなものでも大事にしてきた日本人の美しい心を、私も伝えていきたいのです」

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