東京都文京区の鮮魚店「根津松本」は、高級料亭やすし屋でしかお目にかかれないような高級魚を小売りしている。店主の松本秀樹さん(45)は、「今、築地でいちばんいい魚を仕入れる」といわれている新進気鋭の魚の目利きなのだ。彼の目利きを信じてやってくる客が引きも切らず、今では“日本一の魚屋”といわれている。
その松本さんが、築地で店頭に置く魚を厳選する買い付けに同行させてもらった。
朝6時半、築地場内市場入口前で松本さんと合流。「僕はものすごく早足ですから、頑張ってついてきてくださいね」と早口で言うと、スタスタといってしまった。すでに活気に溢れている場内は、大きなトラックや立ったまま運転できるターレットトラックが行き交っている。注意して松本さんについて行き、魚の仲卸売業者が集まる水産部へ!
松本さんは常磐産のヤナギガレイや網走産のキンキなど、高級魚を触りながら、「魚は基本的に身が太いもの、コロンとしていて、身のハリがあるものがおいしい。立体感があるやつがいいんだよ」と、教えてくれた。買った魚はあとで店に配送されるため、身軽なまま何軒ものなじみの店でどんどん購入していく。
ある店では、太刀魚やカマス、サバなどに加え、1個ウン万円もする鹿児島産の高級からすみを購入。この店だけで23万円もお買い上げ!!
松本さんは仲卸売業者ともよく話をしているが、顔なじみの同業者ともコミュニケーションを欠かさない。ある店では、銀座の超高級有名すし店の人と話していた。
7店ほど回ったところで、マグロ専門店へ。大間のマグロがゴロンと横たわっている。店員においしいマグロの見分け方を聞いてみる。
「発色がキレイなモノがいいけれど、色がくすんでいてもおいしいモノもあるんだよねぇ……。信用できる店で買うのがイチバン!松本さんのところは間違いないよ!!」
松本さん、仲卸売業者の信頼も厚い。ちなみにこの店でマグロを16万円分お買い上げ!さらにほかの店に移動し、超高級紅ザケや1パックウン万円もするウニなども購入!
あっという間に2時間が経過し、8時半。この日松本さんは12店で魚を購入し、支払いは70万円以上。いつもはもっと多くの店を回るという。すごい!
「僕は魚を見るのが好きなので、毎日築地に来ること自体が楽しいんですよ。魚は芸術品のように美しいですから」
少年のような笑顔で答える松本さんには、魚への愛が満ち溢れていた。