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老後に受け取れる年金受給額に、かなりの差が出るといわれている自営業者と会社員の家庭。しかし、どちらも老後のための経済対策は“必須”なのだ。

 

「成人や就職を機に保険料を支払い始め、65歳を迎えたら一定の割合で毎月支給されるのが公的年金制度。その年金には『厚生年金』と『国民年金』とがあります。『夫婦』単位で比較した場合、それぞれの働き方などの形態によって、『厚生年金』を受け取るのか、『国民年金』を受け取るのか変わってくるため、生涯で得られる額に大差が出てしまう。これがいま、“年金格差”として問題視されているんです」

 

こう話すのは、年金制度に詳しい経済評論家の加谷珪一さん。会社員でも自営業でも、年金を納めているのに変わりはない。しかし、夫婦の働き方によって、年金受給額に“格差”が生まれてしまうことは、まぎれもない事実だーー。

 

「たとえば、収入がある人はすべて年収600万円で、平均余命を全うしたと仮定した場合、夫婦ともに会社員であれば、年金の総受給額は『1億384万円』となります。しかし、夫が自営業で妻が主婦であれば、年金の総受給額は『3,432万円』。比較すると、約7,000万円もの格差が生まれてしまうことになるんです」

 

受給までに支払った保険料を“支出”、もらえる年金の総額を“収入”と考え、収支を算出してみても、両者の間には4,500万円ほどの差があるのだ。

 

やはり、受給できる額が少ないのが国民年金。しかし加谷さんは、「会社員の家庭も浮かれてはいられない」と警鐘を鳴らす。

 

「’20年からは、年収850万円超のサラリーマンを対象に、『控除減額』の増税も始まります。おそらく、この増税は将来的に中間層にも及んでくるでしょう。それでも『終身雇用』は変わらないため、正社員の待遇もじりじり下げられていく傾向が強まる。公的年金の受給年齢引き上げ、減額は財政的にも“待ったなし”の状態ですから、厚生年金に頼るだけでは、厳しい老後生活を強いられることになると思います」

 

どの世帯にも必要になってくる老後の経済対策ーー。意外にも加谷さんは、「自営業者のほうが対策を立てやすい」と語る。

 

「一般的に『固定給での終身雇用』が前提の会社員は、どうしても生涯年収の予想がつく。しかし、自営業者の方の場合、ビジネスがうまくいけばいくほど収入が上がる。ですから、今の仕事にできるだけ力を入れれば、貯蓄できる額が増えていくんです」

 

もちろん「貯蓄」とはいっても、マイナス金利時代のいま、単純な銀行預金ではほとんど増やせる望みがない時代だ。

 

「積極的に増やす『投資』を考えるのもいいでしょう。いきなりリスキーな不動産投資にするのではなく、ますは投資信託などから始めるべきかもしれません」

 

夫が会社員、自営業者にかかわらず、妻が専業主婦の場合は、「とにかく収入を増やすことを考えるべき」と加谷さん。

 

「自営業者は時間の作り方も収入の増やし方も比較的自由度が高いので、妻が専業主婦の場合は、夫の仕事を手伝うというのもアリですね。会社員の家庭は、副業OKの会社が増えているとはいえ制限があることが多いですから、妻の稼ぎを増やすことを考えたほうがよさそうです。どちらの場合も、『メルカリ』などを介したネット通販や、自宅のパソコンでできる仕事、趣味を生かした教室を開くなど、チャレンジするチャンスは広がっているので、できることはどんどん挑戦していきましょう」

 

超高齢社会に突入した日本では、いざというときの駆けつけサービスなど「地域密着型の便利屋さんサービスを開業する」のも有効ではないかという。

 

専業主婦でも、ちょっとした“稼ぎ口”を確保しておくことが、老後の安心につながることは間違いないようだ。

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