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女性が夫に先立たれ1人になり資産管理も一手に引き受けるとき……。老後に周りともめないためにいまからできる備えを、家族論と家計の専門家が語り合った。

 

作家の下重暁子さん(82)と経済ジャーナリストの荻原博子さん(64)。それぞれ『極上の孤独』と『老前破産』など生き方の指針となる著書も多い。夫婦の形はそれぞれだが、一般には、妻が夫に先立たれ、1人での生活をスタートさせる場合がほとんどだ。

 

荻原「1人になったときに頼れる人は必要です。家族以外のヨコの人間関係を作っておくことが、老後はお金と同じくらい大切ですね。だって子どもが巣立って、ダンナもいなくなったら、寂しいじゃないですか」

 

下重「私は、割と平気(笑)」

 

荻原「私はダメなんですよ。いまからご近所や飲み友達とホームパーティをしたりしています」

 

下重「そういえば、うちの気丈な母も、本当は寂しかったんでしょうね。かつて高齢者に甘い言葉で近づいて金塊を売りつける豊田商事の事件がありました。お恥ずかしい話ですが、母の死後に小さな金塊が引出しから出てきたことがありましたね」

 

荻原「最近は金利が低いためか、タンス預金が急増していて、振り込め詐欺などの被害にも遭いやすいということもいわれます。しかし、実は銀行の窓口での振り込め詐欺の阻止率は約90%もある。ですから、近くの金庫と思って、現金はなるべく銀行に預けることをおすすめします。また、素人のむやみな金融商品への投資もするべきではありません。それなら、自分を磨くことに投資してください」

 

下重「生涯の仕事と楽しみを持つことが、老後の支えにもなる。若いうちから主婦業で培った衣食住に関する技能を磨いておけば、年を取ってからの再就職でも有利になるはず」

 

荻原さんは1人になった老後も安心できる「生前整理5カ条」として、次を挙げる。

 

【1】まず夫婦で、いまある資産を確認する
【2】夫が趣味で集めた遺品はバザーなどで必要な人へ
【3】詐欺を誘引するタンス預金はやめる
【4】資産を残すなら遺言状に何を、誰に、どのくらい残すかきっちり書く
【5】子どもには資産より生きる力をつけさせる

 

人間関係やこれまでの人生を整理するのもひとつの生前整理だ。自身のお葬式やお墓の話では、2人ならではの死生観が浮き彫りとなった。

 

荻原「私は正直、死ぬことが自分にとってリアルじゃないのと、死んだら無になると思っていますから、まだ真剣に考えたことがないんです。葬式代も、100万円あれば何とかできるでしょう」

 

下重「私の年になっても、まだリアルじゃないですけどね(笑)。ただ、つれあいのほうのお墓に入るつもりはありませんから、都内にある下重のお墓で十分かな。私は1人が好きなので、お墓も1人で建てようということまで考えて、親戚にあたる住職に相談したら、あきれていましたね(笑)」

 

荻原「夫やその親族と一緒の墓だけは絶対にイヤだと言って、最近は、仲のいい女同士のお墓などもあるようです」

 

下重「みなさん、孤独な死を恐れているのでしょうか。老いとともに孤独とも直面します。しかし、孤独とは、単に寂しいものじゃなくて、自分と向き合うこと」

 

荻原「生前整理をするなかで、改めて、自分って何だろうってわかっていくのだと思います」

 

下重「元気なうちから、しっかりと生前整理のプランを立てることが、最後まで自立して生きる安心な老後につながるのです」

経済ジャーナリスト

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