「私たちは“遺体ホテル”とは呼んでないのですが、メディアでそう取り上げられたことで名前が定着してきたようです」と話すのは、ラステル新横浜の横田直彦さんだ。

 

現在の日本には高齢化の波が押し寄せ、これまで以上に多くの人々が日々亡くなっている。その現状を指して“多死社会”と呼ばれているが、いっぽうでは火葬場の数が不足。火葬が追いつかず、“火葬難民”となる遺体が現れている。

 

そんな順番待ちの遺体を安置する場所が、「遺体ホテル」と呼ばれている。ラステルとは“ラストホテル(最後のホテル)”の略称だ。

 

「今までは、葬儀会社それぞれが独自の霊安室に遺体を収めていました。ですが死後すぐに安置される上、ご遺族はご葬儀のときまで故人様と対面できないということもありました。『安置されている間、故人がどういった扱われ方をされているのか』と不安の声をよく耳にしましたので、“安心して故人様を安置でき、いつでも面会できるようにしよう”と始めたのがラステルです」

 

ラステルはその不安を解消するため、24時間いつでも遺体と面会できるシステムを採用している。

 

「面会室のルームタイプは2つあります。1つは、ご葬家が貸し切りで利用できる個室タイプ。もう1つは、20体の故人様を安置できる安置室の隣に共用面会室があるタイプです。後者はご遺族がいらっしゃったときに、故人様が自動で出てきてご対面いただけます。面会室はどちらも白を基調としており、清潔感を意識しております。お客様からも好評です」

 

遺体ホテルは都市部を中心にあり、神奈川や大阪にも存在する。今後も各地に多死社会の波が押し寄せるとみられており、火葬場が遺体の数に追いつかない限り遺体ホテルは必要となる。しかし遺体を扱うという業務内容から、「不吉だ」と地域住民による建設反対の声が上がることも。

 

「しかし弊社では場所を選んで建てておりますので、そういった声をいただくことはありません。とはいえナイーブな問題ですから、その点につきましては気を使っております。たとえばラステル新横浜はオフィス街にあるため、住民がほとんどいない地域です。もう一つのラステル久保山こそ住宅街にありますが、もともと葬儀会館だったところを改装して作りました。どちらも町から受け入れていただいております」

 

実際、死を扱う業種について年々理解は深まってきているという。

 

「当社では葬儀に関するセミナーを行っているのですが、近年参加者が増加。40名の定員が満席になることもあります。足を運んでくださったお客様の多くから『身近なことなんだ』との声もいただくようになってきました」

 

しかしこのまま多死社会が進めば、火葬難民の数が“ホテル”に追いつかないこともあるのでは――。そんな疑問を口にすると、「今のところ、安置室が満員になったことはありません」と横田さんは言う。

 

「亡くなる人数から、さらに多くの人数を見越した部屋数にしているからです。多死社会は団塊の世代が多く亡くなるだろうとされる2030年がピークと言われており、そこを見越しています。新たな火葬場が横浜に建設される予定ですが、完成は7~8年後といわれています。ですから、ラステルはまだまだ必要とされるわけです。これからも今まで得たノウハウを活かし、ニーズにあわせて拡大していきたいです」