「年金問題について、大きな波紋を広げた金融庁の報告書。その中では、日本が抱える“2025年問題”にも触れられているのです」(全国紙社会部記者)
2025年問題とは、団塊世代の多くが後期高齢者(75歳以上)となる時代に懸念されるさまざまな社会問題のこと。
およそ5年後に待つ“恐怖の未来”について語るのは、国際医療福祉大学大学院教授で、公衆衛生に詳しい医師の武藤正樹さんだ。
「’25年には認知症の人が700万人に達する、と報告書にもあります。かつて、世界のどの国も経験をしたことがない、いわば“認知症パンデミック”が引き起こされるため、運転による交通事故や、徘徊による失踪・死亡事件の増加が想定されているのです」
その予想図と、’25年に向けてわたしたちができる備えについて、武藤さん、そして医療介護コンサルタントで『2025年、高齢者が難民になる日』(日経プレミアシリーズ)の共著もある武内和久さんに詳しく教えてもらった。
■認知症有病率が上昇「5人に1人」が患者に
「現在、65歳以上の高齢者の認知症有病率はおよそ15%。しかし、今後は増加していき、’25年には20%に届く見込みです。これは、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症にかかっているという計算です」(武藤さん)
その理由として考えられるのは、生活習慣の変化による糖尿病患者の増加にあるという。
「糖尿病になると、認知症の原因疾患であるアルツハイマー病の発症リスクが2倍になるといわれています。また、アルツハイマー病の発症には、閉経にともなう女性ホルモンの減少が密接に関わっているともされています」(武藤さん)
【対策】
「治療はできませんが、予防はできるのがアルツハイマー病。まだ発症していなくても、刻一刻と脳の中は変化していくため、生活習慣病に注意しながら、適度な運動を長く続けることが大切です。また、習慣づけたいのが、地域交流や芸術鑑賞、日記つけなどの脳を活性化させるアクティビティ。パズルなど“知的レジャー”でもよいので、週2回以上を目標にしましょう」(武藤さん)
■認知症ドライバー1万3,000人、懸念される事故多発
現在でも頻発しているのが、高齢者ドライバーのブレーキとアクセルの踏み間違いによる交通事故だ。
「現在、高速道路で逆走する運転手の約7割が65歳以上、そして4割に認知症の疑いがあるという調査結果もあります。’25年における認知症ドライバーの想定人数は、現在より1.3倍ほど増加した1万3,000人ほど。そのぶん事故件数も増えてしまう可能性はおおいにあります」(武藤さん)
【対策】
今年5月の警察庁の発表によると、「認知症のおそれがある」と医師に判断された75歳以上のドライバーのうち、免許証を返納していない人の割合は35%にのぼるという。もちろん免許返納も求められるが、さまざまな方法で対策ができると武内さんは語る。
「まずは、メーカーによる安全ブレーキの開発や、運転せずに移動できる“タクシー相乗り”サービスの充実化を期待したい。そして自分の運転技術を過信せず、ブレーキの踏み間違い防止装置の取り付けなどを検討しましょう」(武内さん)