「大地震が来たら、外に出ているものはすべて飛んでくると思ってください。とくにキッチンは包丁やハサミといった鋭利なものや割れ物が多く、もっとも危険な場所。フライパンや調理器具を壁掛けするなどの見せる収納がはやっていますが、防災の観点から見れば、大変危険です。飛んできた菜箸が刺さって死亡したというケースもありますから」
そう話すのは、国際災害レスキューナースの辻直美さん。国内外の被災地で看護師として活動するかたわら、その経験をもとにした防災術を発信している。大地震ではすべての家具が住民にとって凶器と化すーー。そこで辻さんがいちばんに対策を勧めるキッチンの、100均グッズを使った「プチプラ防災術」を伝授!
■食器棚は「耐震ラッチ」設置で割れ物の飛び出しを防ぐ
食器棚の扉には、揺れを感知すると自動でロックがかかる耐震ラッチを取り付ける。ホームセンターなどで購入可能。
■冷蔵庫内の調味料は「滑り止めつきケース」ひとまとめ
100均の取っ手つきプラスチックケースの底両面に滑り止めシートを貼れば、滑らず中身も飛び出さないケースの完成。調理を始める前にケースごと取り出せば、そのあと冷蔵庫をロックしても不便はなし。
■家具と天井の隙間には「段ボール」を詰めてがっちり固定
背の高い家具は段ボールを詰め天井との接地面を広くすると摩擦で倒れにくくなる。段ボールの中には格子状の仕切りを入れ、間にタオルなどの布ものを詰めて強度アップ。
■つり戸棚は「開き戸ロック」をかけ、軽いものだけ収納
高所に土鍋や食器など割れ物を入れるのは厳禁。ロックをかけたうえで、さらに落ちても平気なラップや布ものなどを収納。
■テレビや電子レンジなどの家具は「耐震ジェル」で固定
大地震では家電が飛び人に当たることも。耐震ジェルで転倒を防ごう。高温になるオーブンには耐熱のジェルを選ぶ。
■家具と冷蔵庫は「転倒防止板」で壁側に重心をかける
転倒防止板を家具と床の間に挟み込むことで壁側に傾け転倒を防ぐ。上からは段ボールで押さえ込んでダブルで安心。
■冷蔵庫は扉に「ドアストッパー」をつけ、飛び出し防止
子どものいたずら防止用ストッパーを活用。中のものが割れても外に飛び出さなければ、片付けの手間が減る。
■調理器具は収納し、外に置くものの下には「滑り止めシート」を
菜箸などの調理器具はなるべく引出しにしまい、外に置く調味料、炊飯器などの下には滑り止めシートを敷く。
最大震度6弱を記録した’18年の大阪府北部地震では、大阪府内にある辻さんの自宅も大きな揺れに見舞われたが「調味料が4本倒れただけ」と被害は軽微。一方、同じマンションの隣の家では家具が倒れ、部屋中に物が割れ散乱する大惨事に。
「わが家の防災対策は、物をなるべく外に出さず収納すること、そして100均グッズを使った備えがメーンですが、それだけでもここまで差がつきます」
「女性自身」2020年3月17日号 掲載