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「気温や湿度が高くなってくると、食中毒のリスクが高まります。特に、新型コロナウイルス感染拡大以降は家にいることも多く、食事のテークアウトやデリバリーなど、これまで以上に気配りが必要な場面が増えています。菌の中には、“加熱しても死なない”“冷蔵庫でも増える”といったものがあることに気をつけてほしいです」

 

そう警鐘を鳴らすのは、食中毒に詳しい日本食品衛生学会副会長で東京農業大学応用生物科学部栄養科学科教授の小西良子先生。“巣ごもり”が増えた2度目の夏を前に、食中毒を防ぐための注意点について、小西先生に聞いた。

 

そもそも食中毒は有害な微生物(細菌やウイルス)が起こす健康被害。食品を介して有害な物質が体内に入ると、腹痛、嘔吐、下痢、発熱などの症状が現れる。なかでも暑くなる時期に気をつけたいのが細菌。細菌性食中毒は1年を通して発生するものの、食中毒を起こす菌は特に20〜35度で、もっとも増えるといわれている。

 

原因となる細菌には、ウェルシュ菌、セレウス菌、リステリア菌、カンピロバクター、腸管出血性大腸菌(O157ほか)などがある。

 

「近年、細菌性食中毒でもっとも発生件数が多いのがカンピロバクターによるものです。鶏や牛などの家畜動物やペットなどの腸管内に生息している細菌で、鶏肉の表面に多く見られます。症状は下痢や嘔吐などですが、感染から1週間から数週間後にギラン・バレー症候群という末梢神経疾患を発症することも。これは手足の麻痺や顔面神経麻痺、呼吸困難が起こる疾患で、食中毒症状が軽い場合でも発症する可能性があります」(小西先生・以下同)

 

カンピロバクターは熱や乾燥に弱く、75度以上で1分間加熱処理すれば死滅するため、調理の際は食材の中心部までしっかり火を通すこと。刺身やタタキなどで食べるのは避けたほうがよいそうだ。

 

また、ウェルシュ菌、セレウス菌は加熱しても死滅しない細菌。

 

「これらは60度以上の環境下になると、芽胞(固い殻に閉じこもっている状態)を作り、生き延びています。100度の高温で調理しても菌は死にません。調理後すぐに食べてしまえば害はありませんが、50度以下になると増殖しやすくなります。ウェルシュ菌はカレーなどの煮込み料理、セレウス菌はチャーハンやパスタなどを放置すると増えやすくなります」

 

そして、リステリア菌は冷蔵庫の中(4度ほどの低温)でも生存・増殖するといわれている。

 

「特に加熱せず食べる食品に注意を。ナチュラルチーズや生ハムなどには気をつけましょう」

 

さらに、腸管出血性大腸菌は少量でも発生する恐れがある。

 

「生の肉や魚を扱った台所用品からほかの食材への汚染や、ハンバーグなどの生焼けなどに気をつけましょう。ただ、中までしっかり火が通っていれば大丈夫。加熱によって防げる細菌です」

 

家庭で発生する食中毒は食品取り扱いの不注意によるものがほとんど。食中毒予防には、《付けない》《増やさない》《やっつける》の三原則を守ることが重要だという。

 

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