画像を見る

老親との別れは誰にとってもつらいものだが、きちんと相続対策をしておかないと、悲しみにひたっていられる時間なんてない。身近なきょうだい同士で骨肉の争いにならないよう今から備えよう! そこで、読者世代が陥りやすい“争続”トラブルを紹介。具体的な対処法を相続問題に詳しい行政書士の竹内豊さんに聞いた。

 

【ケース】母親が書いておいた「遺言書」が無効だと訴えられた

 

長男夫婦と同居していた母は、少し“物忘れ”の症状が出始めていた。その母が亡くなった後、「遺言書」をもとにきょうだいで相続の準備を進めていたところ、次男の相続分が少ないことが発覚。

 

これに納得できない次男は、「病院にお見舞いに行ったとき、面会禁止のためタブレット端末越しに面談をしたところ、母さんは自分のことが認識できなかった。遺言書の日付の段階では認知症になっていたはずなので、この遺言書は無効だ!」と、言いだし……。

 

【対策】主治医に「診断書」を書いてもらおう

 

「遺言書」は元気なうちに書くのが鉄則なのだが、「元気」というのが遺言書を書くときにカギとなってくる。

 

「体は元気であっても、話していたことを理解できない状態で遺言書を書いた場合、ほかの家族から家庭裁判所に無効の訴えを出されたら、その遺言書は無効になってしまうことも考えられます。ここで問われるのは『遺言能力』といい、遺言書を遺す本人が、内容を理解して、自分が死んだ後にどのようなことが起こるのか理解することができる能力のことです。このケースでは、遺言書を書いた日付に注目して、この時点で母に遺言能力があったかどうかが問われてきます」(竹内さん・以下同)

 

遺言書を書くときには、書いたときに近い時点で「主治医の診断書」をもらっておくと、「遺言能力」があったことを実証できる材料の一つになるという。

 

また、できれば認知機能検査などを受けてもらい、「判断能力には問題がない」ことを確認しておくことも、「安心な遺言書」へとつながる。

 

逆に、病気で入院するなど体調は悪くても、頭はしっかりしていて、物事の判断はできるという場合はどうしたらよいだろう。判断能力には問題がないが、遺言書を実際に自分の手で「書く」ことができない、というケースだ。

 

そんなときは公証役場に連絡してみよう。入院中で病院から出られない場合でも、公証人が病院に出向いて公正証書遺言を作成してくれるという。

 

「公正証書遺言は公証人が、遺言能力があるかどうかを確認しながら作成しますので安心できますが、それでも100%確実というわけではなく、過去の裁判では覆った例もあります。気をつけたいのは、末期がんなどで余命宣告を受けてから、一時帰宅したときに急いで遺言書を作成しようというようなケースです。駆け込みで遺言書を作る場合は、内容をできるだけ簡素化するのがポイント。『病気なので細かいことまで考える余裕がなかったはず』と判断されてしまうこともあるので、『介護など面倒を見てくれたので全部長男に渡したい』というように、要点をまとめて指示するといいでしょう」

 

その際、遺言書に「付言事項」の欄を設け、「なぜこのような相続の内容にしたいのか」を説明すると、ほかの相続人(きょうだい)にも納得してもらいやすいという。

【関連画像】

関連カテゴリー: