【ケース1】夫とは不仲でも嫌いになったわけでもなくずっと良好な関係
林田智子さん(仮名・52歳・医療従事者)
卒婚歴:3年
居住形態:自分は地方都市。夫は東京
林田智子さんは3年前、一人息子が社会人になったタイミングで卒婚を決めた。会社員の夫は学生時代からの知り合いで、結婚20年以上になる。
「物理的に距離も離れてしまったいまは、LINEで連絡を取り合う程度ですが、家族の信頼関係は揺らいでいないと思っています」
というまさに「円満卒婚」の典型。ではなぜ卒婚なのか。林田さんは、卒婚へ至った理由をこう話す。
「何より私が地元に戻って、仕事に100%邁進したいと考えたことが理由です。夫は、当然ですがこれまでの生活スタイルを変えたくないという希望があり、どちらかが妥協しなければならないのであれば、お互い自由に生きる『卒婚』を選択しよう、ということになりました」
林田さんはもともと家事が得意ではなく、家のことは夫任せの仕事人間だった。
「子育ても、夫のほうが主として担ってくれていました。私もできる限りは料理や掃除もするようにしていましたが、家の中のことはとにかく向いていないことを自覚していました。そして50歳を過ぎ、子どもの大学卒業も見え、仕事を極めたいと考えたとき、どうしても『主婦』という役割をプレッシャーに感じたのです」
妻の役割を果たす余力がもうないということを夫に話し、理解してもらえたという。
「いまは正直ラクですね! 帰宅時間を気にすることなく、思い切り仕事をして、家に帰って眠るだけ。仕事があるのがありがたいので、休日もいりません。これが私にとっての、理想の幸せな生活でした」
何かあればLINEグループで連絡をとれば十分家族の絆はある、と林田さんは言い切る。
「多様性の時代ですから、こんな家族もありなのでは--」
〈卒婚したメリット〉仕事に1 0 0%のエネルギーを注げ、家事に追われることがない。
〈卒婚したデメリット〉仕事をしすぎて気がついたら無休なため、周囲から心配される。