「下ごしらえは、“昔どおり”にこだわることはありません。“今”に合わせて変えていいのです」
そう話すのは女子栄養大学名誉教授の松本仲子先生。以前より段取りを減らしても、今の環境ならおいしく調理できるという。
「野菜は品種改良などで、今のものはあくが減っています。昔どおりのあく抜きだと、ごぼうの香りやたけのこのえぐみなど、“野菜らしさ”を取りすぎてしまいます」(松本先生・以下同)
料亭などで上質で大量の昆布を沸騰直前に引き上げる様子を目にするが、家庭用の昆布なら煮立てたほうがよいだしが取れるという。
「家庭料理はプロの料理と違うおいしさがあるのです」
そんな、料理の下ごしらえの新常識を松本先生が教えてくれた。
■野菜のあく抜き
【ごぼう】
〈旧常識〉酢水にさらしてあくを抜く→〈新常識〉切ったら順に水につけていき、切り終わったらすぐ調理してOK
あくは野菜の「らしさ」。最近の野菜はあくが減っているので、あく抜きもそれほど必要ない。千切りごぼうの市販品と自分で切ったものを比べた実験では、自分で切ったもののほうが香りがよいとの結果が。市販品は白さを保つためしっかりあく抜きされているが、その分香りが薄い。ごぼうのよい香りを残すには、酢水の必要はなく、真水に切りながらつけ、すぐ使ってOK。
【たけのこ】
〈旧常識〉ぬかと鷹の爪を入れた大鍋で皮ごとゆでる→〈新常識〉皮を取ってから、鍋に入る大きさに切り分けてぬかとゆでる
京都で取れたたけのこを東京の料亭で使うことを想定し、白さを保つような下ごしらえが伝承されたとされる。あく抜きの実験では、ぬかは必要だが鷹の爪は不要と判明。また、皮はゆでる前に取ってOK。ゆで時間は竹串がすっと入るまで、大きさによるが30分くらい。硬い軸の部分は適当な大きさに切ってゆでれば、もっと短時間で済む。