7月8日、安倍晋三元首相(享年67)が銃撃されて死亡した。殺人容疑で送検された山上徹也容疑者(41)は、母親が入信した旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)への積年の恨みが犯行の動機だと供述している。注目が集まったのは「霊感商法」という手口だ。宗教や霊感商法に詳しい紀藤正樹弁護士が解説する。
「統一教会は全国各地で霊感商法による違法な資金集めや詐欺的伝道などさまざまな違法行為を起こしてきました。霊感商法とは先祖などの因縁や祟りがあると脅して、高額なお布施をとったり、高額な商品を売りつける手口です」
「全国霊感商法対策弁護士連絡会」によると、昨年までの35年間で統一教会などが行った霊感商法の被害額は1237億円に。この5年だけでも55億円にのぼる。長年、宗教トラブルに取り組んできた山口広弁護士はこう語る。
「被害額は弁護士や消費者センターなどに相談があったもの。実際はこの数十倍ほどにも達するでしょう。霊感商法に狙われるのは圧倒的に女性が多い。悪質な手口を知ることで、被害を未然に防ぐことができます」
それでは、実際の事件を基に、霊感商法の典型的な4つの手口と見抜き方を学んでいこう。
■ 家族がだます側に回る「FF」という手口
Aさん(40代)の養母は心臓手術のため入院。統一教会の信者である姪が、教団幹部を引き連れ「聖本10冊を家に入れなければお母さんを助けられない」と創始者・文鮮明氏の説教集『聖本(1冊約3000万円)』の購入を強要。
養母名義の預金から3億円を献金させ、その後も「お母さんが心臓病なのは先祖の罪を背負っているからだ」と、4年にわたりさらに約1億9000万円を奪った。
「霊感商法の被害のきっかけは『訪問』『街頭』『広告』『FF(ファミリー&フレンド)』の4つ。『FF』は家族や親戚をはじめ友人、知人などを使う。信頼できる人からの誘いでも霊感商法を疑いましょう」(紀藤弁護士)