気象庁は6月9日、世界的に異常気象をもたらす要因となるエルニーニョ現象が発生したと発表。4年ぶりのエルニーニョ現象は、自然災害以外の面でも私たちの生活に大きな影響を与えかねない。
「異常気象になれば、農作物が不作となり、野菜や果物などの価格が上がります。世界的な穀物価格の高騰などが起こった場合は、家計を圧迫する一因になることが予想されます」
こう語るのは、第一生命経済研究所の首席エコノミスト・永濱利廣さん。
世界各地で異常気象を引き起こすエルニーニョ現象は、干ばつや水害が原因で収穫量が減ってしまうという警戒感を招く。そのため穀物の先物価格が上昇する傾向があるという。
「今回もパンや麺類、乳製品のほか、肉や大豆製品、調味料類などの値上げを招く可能性があります。そうなれば、現在の値上げラッシュに追い打ちをかけるように、食費などの負担がのしかかってくるでしょう」(永濱さん、以下同)
食糧を海外からの輸入に頼っている日本は、世界で起きたさまざまな出来事の影響をどうしても受けやすい。これまでエルニーニョ現象の影響で、最も家計への負担が大きかったのは’93年だった。
「当時は記録的な冷夏で、国内では農作物が不作となり、海外から初めて米を輸入した“平成の米騒動”が起きました。この年と同程度の影響が出たと仮定すると、家計支出の前年からの負担増分は、金額にして1人当たり1カ月で1千239円。夫婦世帯では約2千500円増える計算になります」
’93年当時に比べ、食料品の相次ぐ値上げに見舞われているなか、同等のダメージが家計におよぶことも十分考えられるという。
そして、負担増が懸念されるのは食品関連だけではない。今夏予想されている“猛暑”による冷房需要の増大もその一つ。
「連日気温が高くなると、エアコンに頼らざるをえません。電力料金が値上がりしているなか、猛暑によって光熱費がかさんでしまうことも考えられます」 記録的な猛暑に見舞われた場合、電気代の爆上がりに直結してしまうのだ。
さらに永濱さんは、エルニーニョの影響による家計への負担が景気の停滞を招くことを懸念する。
「ようやく経済が少しずつコロナ禍前の状態を取り戻しつつあるなかでの物価上昇は、消費者マインドを冷え込ませる恐れがあります。外食産業やレジャー産業への影響も小さくはないでしょう」
値上げラッシュにエルニーニョが拍車をかけるなか、私たちには、家計を守るためのいっそうの工夫が求められることになるのだ。