「現在、主流の詐欺は、一人暮らしの高齢女性などを狙ったキャッシュカードのすり替え。銀行協会や警察を装ってカードや暗証番号を騙し取り、現金を奪う手口です」
こう警鐘を鳴らすのは、特殊詐欺での逮捕歴がある一方、メディアで詐欺の手口を発信したり、青少年の更生支援活動に取り組んでいるフナイムさんだ。
「キャッシュカードすり替え詐欺は、まずアポ電で『あなたの預金が不正に引き出されている』『口座が犯罪のマネーロンダリングに使われている』と不安をあおります。そして翌日、翌々日に“受け子”(被害者から現金を直接受け取る役目をする者)が自宅訪問します。裁判所指定と偽った普通の封筒に、キャッシュカードと暗証番号を書いた紙を入れさせます」
ここで「法的な手続きが必要なので、割り印をしてください」と切り出す。
「印鑑を取りに行っている隙に、犯人が事前に用意していた偽のカードを入れた封筒にすり替え、その封筒に割り印をして被害者に渡し『手続きが終わるまで、絶対に開封しないでください』と念を押します。被害者は本物のカードが手元にあると思い込んでいるので、安心してしまう。そして犯人はすり替えた封筒に入っているカードと暗証番号で、ATMで現金を引き出すのです」(フナイムさん)
このように、詐欺・犯罪グループや悪徳業者は、さまざまな形で50代、60代、また高齢者をターゲットにしている。手法は年々増え、最新の詐欺手口には怪しまれないような“工夫”も。
近著に『60歳から絶対やるべき防犯の基本』(主婦の友社)がある、防犯アドバイザーの京師美佳さんが、ほかの手口を解説する。
「最近、訪問型の詐欺で多いのは『永代供養詐欺』。実在するお寺の名を使って、立派なカタログを作り、訪問販売します。親身に話を聞き、永代供養墓を100万円などで契約させるのですが、全くの架空の話。後日、お寺に行って、騙されたと気づくのです」
対面型ではなく、SNSを利用した詐欺にも要注意。
「高齢者ばかりでなく、若い人も被害に遭っているのが『デパート倒産バーゲン詐欺』。X(旧ツイッター)などで広告を出し、クリックすると『◎◎デパートが閉店するので、ブランド品が80%オフ』という情報が。買っても届くのはニセモノという詐欺です」(京師さん)
「マイナポイント詐欺」も押さえておくべき。
「マイナポイント2万円分が当選、または失効したとして、名前や生年月日、クレジットカード番号など個人情報を抜き取ろうとするフィッシング詐欺です」(京師さん)
「無料点検詐欺」も要注意。
「近所で(うその)工事をしますと挨拶に来た際に『ご迷惑をおかけするので、無料でお宅の点検をします』と言って、屋根や床下で、不必要な補強をしたりして、お金を取ります」(京師さん)
トイレ修理などで、最安値をうたいながら高額請求をする悪徳業者の名が消費者庁によって公開されているように、「水のトラブル詐欺」も後を絶たない。
「水回りは急を要するので、インターネット検索をして、上位に来る業者を呼んでしまいがち。しかしその業者が安心とは言い切れません。水道局で紹介してもらった指定業者やなじみの工務店に頼むと安心です」(京師さん)
断捨離をしている高齢者を狙うのが「不用品買取り詐欺」。
「貴金属類や高級時計などを、法外に安く見積もる被害が出ています。買取り額に納得できなくても、買うまで家に居座られます」
街角詐欺で代表格なのが「折り紙・お花詐欺」だ。
「折り紙詐欺は、災害時に増える傾向があります。だいたい寄付を目的に、1枚千円の折り紙を渡し、鶴などを折ってもらう手法。自分の生活の苦しさを語り同情心に訴え、花を1輪千円ほどで売りつける手口も見られます」(京師さん)