各地で「相乗りタクシー」のサービスが広がっています。
相乗りタクシーとは、見知らぬ方と同乗して、それぞれの出発地から目的地まで送ってもらうサービスです。配車アプリなどで予約すると、人工知能(AI)が目的地の近い利用客をマッチングします。国土交通省が認可して2021年11月から運用が始まりました。
最大のメリットは、料金が単独での乗車より安いことです。たとえばAさんとBさんの相乗りで、Aさんが15Km、Bさんが10Km乗車したケースでは、合算走行距離25Kmに対してAさんは15Km÷25Km=60%、Bさんは10Km÷25Km=40%の乗車と考えます。全行程のタクシー料金が5千円なら、Aさんは5千円×60%=3千円、Bさんは5千円×40%=2千円。乗車距離に応じた“割り勘”です。
料金は、マッチングが決まり予約が完了した時点で確定します。「いくらかかる?」という不安がないのもうれしいですね。
加えて、運転手不足を補うこと、走行台数が減って環境への負荷が軽減される点もメリットでしょう。
東京都心部では午後8時から午前6時までJR東京駅の半径20Km以内で、相乗りタクシーが利用できます。料金は最大半額です。 大阪市でも2024年3月まで実証実験が行われましたが、料金は最大4割引き。運行は午後11時から午前2時までと、夜間のタクシー不足の解消が目的でしょう。
■国が進めるのが「ライドシェア」。6月に全面解禁か
また、横浜市には子どもの送迎専用の相乗りタクシーがあります。親が送迎できないから習い事をあきらめる子どもを減らそうと、スタートアップ企業のhabが運営します。料金はスクールによりますが、片道500円という水泳教室も。乗客は小学生だけなので安心です。
いっぽう、いま国が進めているのが「ライドシェア」です。
ライドシェアは、客を乗車させるための第二種運転免許を持たない一般の運転手が、自家用車を使って有償で顧客を送迎すること。東京23区など国がタクシー不足を認めた地域で夜間などに限り4月からサービスが始まっています。
日本では、ライドシェアの運転手はタクシー会社の試験などを受けて所属する必要があり、運行管理もタクシー会社が行います。利用料金はタクシーと同じです。
そのためか、ライドシェアが急激に増えることもなく、いまのところ事故などの情報もありません。 ただ不安はぬぐえません。6月に国が全面解禁などを判断するようですが、時間をかけて安全性を検証してほしいと思います。
となると、やはりプロの運転手、相乗りタクシーが安心でしょう。
広島県三次市は、バス停や鉄道駅などから700m以上離れた地域に住む方に、相乗りタクシーの利用に使える「相乗りタクシー利用助成券」を配布しています。公共交通機関の少ない地方の“生活の足”として、割安に利用できる相乗りタクシーが身近になる仕組みを、自治体には模索してほしいです。