「6月12日、東京都西東京市のスーパーで、カートを手にした80代女性がエスカレーターで転倒し、手すりと床の間に挟まった状態で倒れているところを発見されました。女性は転倒した際に首を挟まれたようで、窒息死したとみられています」(全国紙記者)
エスカレーターによる事故が後を絶たない。一般社団法人日本エレベーター協会が2018~2019年までに行った「エスカレーターにおける利用者災害の調査報告(第9回)」によると、エスカレーターの事故は1,550件発生しており、第6回調査(2003~2004年)の674件に比べ2.3倍に増えている。
数々の事故現場で救助活動を行ってきた元消防士で、危機管理アドバイザーの野村功次郎さんが語る。
「カートやベビーカーを持ったままでは、乗降の際にバランスを崩しかねません。また駅、空港、商業施設などによって速度が違うので、自分の思い込んだ速度と異なっていると、乗降時に転倒しそうになります。緊急停止ボタンが押された際も要注意。急に停止すると前のめりに。利用時は、しっかりと手すりにつかまることが大事です」
国民生活センターにも「エスカレーターに乗ろうとして踏み外し、後ろ向きに転倒して後頭部を打撲。3針縫った」(80代女性)など、一歩間違えれば死につながるような事例が報告されている。
衣服などの巻き込みも、大きな事故につながる。
「夏場はゴム製のサンダルが、冬場はマフラーやストールなどが巻き込まれる事故が起きます。私自身、ストールを巻き込まれ転倒し、顔にあざができた女性を救助した経験があります」(野村さん、以下同)
また、2009年4月には、40代男性が、背中とエスカレーターのベルトが接触した際に体を持ち上げられ、吹き抜け部分から9m落下して死亡した事故もあった。
日本エレベーター協会は、ステップの上を歩いたり、走ったりしない、カートや車椅子は乗せない、ステップの黄色線の内側に乗るなど、呼びかけている。
ときには重大事故にもつながる“街中の危険”は、エスカレーターばかりではない。厚生労働省の人口動態統計によると2022年では、転倒・転落・墜落による死亡者は年間11,569人に上っている。しかも、そのうち家などの住居施設以外で亡くなった人は8,518人。じつに1日約23人が家以外の場所で、スリップやつまずきなどの転倒や転落で亡くなっていることになるのだ。
「ホテルやデパートなど光沢のある床で足を滑らせることは多いです。とくに雨の日ばかりでなく、湿気が多い日も滑りやすい。
消防隊員だったころは、たくさんの現場にかけつけました。圧倒的に打撲が多かったですが、なかには頭を強く打ち、急性硬膜下血腫で緊急手術をした事例も。幸い、その方は一命は取り留めました」
転倒リスクがあるマンホールも要注意。ヒールの踵がマンホールの穴に引っ掛かることは、多くの人が経験しているだろう。