「以前は、火災保険の契約期間は住宅ローンに合わせて最長36年でしたが、2015年10月以降、最長10年に短縮されました。今年10月に初年度の契約が一斉に更新時期を迎えるため、更新件数が激増します。そのとき提示される保険料を見て、ほとんどの人が悲鳴を上げるのではないでしょうか。1年あたりの金額が、倍近くに値上がりしているからです」
こう話すのは“保険のプロ”として活躍するファイナンシャルプランナーの長尾義弘さん。
左ページの表を見てほしい。これは火災保険の参考純率の改定内容で東京都を例として示したもの。なんとマンションの場合、過去10年間で5回にわたり、累計62%も引き上げられている。
「これは火災保険の保険料を決める指標です。この参考純率を基に各損害保険会社は、保険料を決めます。ですので保険料の値上げ幅は保険会社によって異なります。また火災保険は、都道府県によって保険料は異なりますし、建物の構造によっても違います。ですから、値上げ幅は住んでいる場所などで大きく異なりますが、おおむね1.3~2倍になっていると予想されます。つまり、次の更新時の火災保険料は倍増するとの覚悟が必要です」(長尾さん、以下同)
保険専門サイト「セフティー」のデータによれば、ある顧客のH構造の火災保険の見積額は、10年前に10年契約した際の1年あたりの保険料が1万5千円だったものが、今回の更新では、補償内容は同様にもかかわらず4万円になっており、実質2.6倍という驚きの金額が紹介されている。
■水災を外すと保険料はかなり安くなる
いったい、この10年間でなぜこれほど火災保険料は値上がりしたのか? 長尾さんはこう明かす。
「今年もすでに全国各地で大規模な水害が起きていますが、2000年以降、巨大な台風、度重なる集中豪雨などで、被害が激甚化。その分、保険会社の支払金額も激増しています。たとえば、2018年の台風21号の際には1兆円近い保険金が支払われるなど、保険会社の収支は大きく悪化しています。それらが私たちの保険料に跳ね返ってきているわけです」
保険会社はこうした自然災害の大規模化にともない、2022年からは最長契約期間を5年に短縮するなどの対応に追われている。
「これだけ全国で自然災害に見舞われているわけですから、火災保険の必要性も極めて高くなっています。保険料が高くなったからやめるというわけにはいきません。そこで安易に、負担を減らすために、保険金を少なく設定することを考えがちですが、これもやってはいけません。もし実際に罹災したときにとても困ることになります。まずは生活の再建をするにもお金が必要。火災保険は『建物』と『家財』に分かれているのですが、両方に加入しておくことが基本です」
そのうえで、どのようにして、この倍増した火災保険料に対処したらよいのだろう。
長尾さんが提案する“安心”対処法は次の5つだ。
