人気の観光名所を訪れる、六十の手習い、はたまた大自然のアクティビティに挑戦……「定年後やりたかった100のこと」に1つずつ挑戦する様子を動画で配信する66歳の男性が話題となっている。YouTubeやInstagram、TikTokなどにアップされるテンポのよい動画は、約500万回再生のバズりもあるほど。
動画の投稿主は、大阪府在住のドジっぺやっちゃん。気さくで嫌みのない雰囲気と、おちゃめで明るい笑顔&行動力が老若男女にウケているようだ。
若い人たちからのコメントも多く《アグレッシブで尊敬しかないですね。私も将来、こうなりたい》《元気なお姿に感動しています。自分もやりたいことを考えながら年を重ねたいと思います》など、その前向きさが人々を引きつけている。
人気動画の裏側をご本人に聞いてみた――。
「動画配信を開始したのは、2022年7月からです。それから3年と少しで、達成できたことも95まできました。
はじめのうちは動画制作に関してとにかく試行錯誤。制作は妻(由美子さん)が独学で習得し、担当してくれています。私も最初はやってみたものの、とにかく仕上がりが遅い。足を引っ張るばかりなので、すっかり妻にお任せしちゃっています(笑)」
トライするテーマを2人で練り込み、由美子さんが書いた脚本をもとに撮影、後でアフレコを行う。
「見てくださるみなさまに支えられているな、とありがたく感じます。関西のおっちゃんが好きなことをやっているだけなのに、勇気をもらえるなどと言ってくださって恐縮しきり(笑)。やっちゃんにとっては動画配信が人生のハリにもなっているんです」(由美子さん)
そもそも、やっちゃんが100のやりたかったことを配信するきっかけは、何だったのだろう。
「以前は、仕事が忙しすぎて、家族との時間もろくに取れないような生活をしていたんです。定年を間近に控えたころ、何もできひんかったことに気づき、それなら定年後にこれまでできなかった夢をかなえたいと考えたのが発端です。
妻に相談すると、『定年してボーッとしてたらあかんから、ぜひやったらええよ』と大賛成してくれて。それで、定年直前からやってみたいことを書きためていったんです」(やっちゃん、以下同)
やりたかったことは、あっという間に100を数えた。だが、それを配信するとなると、内容によっては事前に撮影の許可を取る必要があるなど制限も伴う。そのため、夫婦で企画の内容を詰めていく作業が必要だった。
1本の動画制作にかかる労力は、2人の想像をはるかに超えていた。だが、“ワクワクすることをやる”というベースがあったからこそ、モチベーションは今日まで維持できているという。そして二人三脚での奮闘は、夫婦のあり方にもよい影響を与えていると話す。
「すでに子供たち(長女、長男)は独立して孫もいます。家では2人きりですが、動画作成をきっかけに定年前とは比べものにならないくらい会話が増えました。もともと基本的にお互い干渉しない夫婦でしたから。
動画に記録するのには、元気に動けるうちに自分の姿を何らかの形で残しておきたいという思いもあったんです。いずれ寝たきりや認知症になることに対する恐れもあるのですが、あれこれ考えたり、あちこち出掛けていると、脳も足腰も前より若返ったと感じるほど(笑)」
定年後は週に1~2回のペースでアルバイトをしているというやっちゃん。由美子さんもパートをしているという。
「2人とも仕事をしていることも動画を作るうえで役に立っています。動画の感想を聞かせてくれる人もいたり、家の外でのコミュニケーションからヒントを得られますし、夫婦2人だけでは視野が狭くなりがちなので」
なお、これまでにもっともバズった動画は、YouTubeでは、「鉄板付きテーブルが欲しい」(パート59)で、492万回再生。お好み焼き屋さんの鉄板テーブルをオーダーして組み立て、焼きそばを作るというもの。
また、Instagramでは、「娘とバージンロードを歩きたい」(パート81)が322万回再生となっている。コロナ禍に結婚したため、挙式を諦めていた娘とバージンロードを歩くというもの。しかも、娘が着たウエディングドレスは、やっちゃんと由美子さんの手作りだった。
それはそうと、やりたかったことも、目標の100まであとわずか。すべて達成したら、どうするのだろうか――。
「やりたいことはまだまだあるんです。200、300と重ねていくかもしれないし、妻の100のやりたかったことを始めるかもしれません。まだまだ続けますよ!」
定年後というと、ライフスタイルの変化からどうしても戸惑いや夫婦間の摩擦が起こりやすくなりがちだ。
「裏を返せば、新しい関係性を築くチャンスともいえるのではないでしょうか。私たちも、想像していた定年後よりぐっと心地よい距離感で過ごせていますから」
やっちゃん夫妻が実践する“ワクワク”と“行動力”。そこに、老後をいっそう楽しく過ごすカギがありそうだ――。
画像ページ >【写真あり】仲睦まじい夫婦だが、以前は「仕事が忙しすぎて、家族との時間もろくに取れないような生活でした」(他2枚)
