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「終活は読んで字のごとく人生の終わりについての活動です。いわば死に支度。子どもから勧められると『死ねと言っているの?』と、傷ついてしまう親もいるでしょう。生前に実家を片づけることは、人生を生ききるための前向きな活動。私は“生き活”と呼んでいて、正しくやれば、親はどんどん元気になるんですよ!」

 

そう話すのは、掃除・片づけ・生前整理のプロで生前整理アドバイザー認定指導員も務める大津たまみさん。「終わり」に向けた作業と考えるのか、新たな「始まり」への第一歩と考えるのかで「実家の片づけ」はガラッと変わってくるという。大津さんによれば、やればやるほど親が元気になる理由は2つ。1つ目は、物理的にモノが減ることで、安全・快適に暮らせるということ。

 

「家の中にモノがあふれていると、災害時に落下物がぶつかったり、邪魔になって逃げ遅れる可能性が。日常生活でも、つまずいてケガをする可能性が高まります。家が片づけば、当然そうしたリスクも減少。さらに家の中に十分なスペースが生まれ、孫が喜んで遊べる家にもなります。孫の笑顔が見たい親は多いものです」

 

2つ目の理由は、親の潜在的な望みがわかること。

 

「モノというのは、言ってみれば“思いがカタチになったもの”ですから、片づけをいっしょに行うことで、親のひそかな思いに気づくことができるのです。“紙類”などは、老親が捨てられないモノの代表ですが、『なんでこんなモノを!?』というチラシやパンフレットに、意外な願いが込められていたりするんです」

 

実際に大津さんが片づけの手伝いに訪れた80代の女性の家からは、大量の旅行パンフレットが見つかったことがあった。じつはそれらは「いつか息子と一緒に行きたい」と、女性がひそかに集めていたものだったというーー。いっしょに家を片づけていくと、一見不要に思えるそうした「モノ」たちが、親の気持ちや願いを知る糸口になってくれるのだ。

 

「だからこそ、親が元気なうちにスタートしてほしいのです。早ければ早いほど、親の願いをかなえるお手伝いもできますからね」

 

実際に片づけを始めるにあたって、まず大切なのは親の気持ちに寄り添うこと。そのために大津さんは、ぜひ、自分の家の片づけから始めてみてほしいという。

 

「生前の家の片づけは、楽しいことも大変なこともたくさんあります。自分はそれらを経験していないのに『やれ』と言っても、親は納得してくれません。それに、親が片づけにつまずいたときに冷たい態度をとってしまうことになり、最終的にはお互いが意固地に……。ですから、まずは自分の家の片づけを写真に撮って『こんなにスッキリしたよ』と見せてあげてください」

 

さらに、親世代は、モノをの持ち方の基準が違うことも理解する必要がある。

 

「戦中、戦後の貧しい時代を体験した親世代は『モノが多い=豊か』『モノを捨てるのはもったいない』という価値観が根強くあります。その価値観を否定してしまうのは、親の人生を否定するようなもの。ですから、片づけの際も『捨てる』という言葉は厳禁!『使わないなら、もったいないから手放そうね』という言い方に変えましょう」

 

実家の片づけのポイントは、一気に終わらせるのではなく、ゆっくり、焦らず、でも止まらず、確実に進めること。

 

「最終的な目的は、モノを極限まで減らすことではなく、あくまでも『大切なものをあぶり出すこと』。ですから、片づけと同時に、親御さんにとってもっとも大切な品を入れる『思い出箱』も、ぜひ作ってあげてください。理想的な大きさはみかん箱大が目安です。極端な言い方をすれば、これさえ作ってあれば『ほかのものは処分しても大丈夫』と割り切ることができますよ」

 

そして、くどいようだが始めるのは「今」!

 

「まさに、親孝行したいときには親はなし。『いつかやろう』の『いつか』は、待っていてもこないのです」

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