地球温暖化による異常気象か、全国で突発的、局地的な“ゲリラ暴風雨”が続発中。急に雲行きが怪しくなったと思った瞬間、大粒の雨。コンビニなどに駆け込む人の多くが買い求めるのは、もっぱらビニール傘だ。
しかし暴風にあおられると簡単に折れ曲がってしまい、心ない人がそれを“ポイ捨て”すれば、瞬く間に町中が“ポイ捨てビニ傘”であふれる。そして折れ曲がった鋭利な骨は一転“飛んでくる凶器”と化す。
東京都は「降雨時の身の回りの危険」についてのアンケートを実施し、「雨の日の事故防止ガイド」を発表。担当の都・生活安全課課長の宮永浩美さんに話を聞いた。
「アンケートは’13年度に都民3,000人を対象に行ったものです。差した状態の傘に『ヒヤリとした』『ハッとした』経験があると答えた人は1,657人、たたんだ状態の傘でも1,260人います。また、履き物、自転車などの製品別でみた降雨時の危険な経験も、傘は1,657人で1位。そのうち245人が『ケガをした』と回答しました」(宮永さん)
実際にかなりの割合で“ポイ捨てビニ傘”によるケガか、その一歩手前の経験が報告されている。
「壊れたビニール傘の放棄・放置は、街を汚すだけでなく、捨てられた傘で人に思わぬケガをさせることがあります。壊れた傘の“ポイ捨て”はとても危険なので、絶対にしないでください」(宮永さん)
危険な“ポイ捨てビニ傘”をゼロにするにはモラルに訴えるしかないが、今年6月、日本郵便は全国4,500の郵便局で、これに関するユニークな新商品を販売開始した。
「突風を受けても傘の骨が外側に折れ、風圧を逃すことで事故防止などができる構造の雨傘、その名も『ポキッと折れるんです』といいます。昨年12月に南関東エリアで販売したところ3カ月で完売し、今回の全国展開となりました」(日本郵便・広報担当者)
いったい、『ポキッと折れるんです』とはどんな傘なのか?そもそも、どんな理由で商品化したのだろうか?そこで、開発したメーカー「長寿乃里」本社(神奈川県横浜市)をたずねた。
「まずは広げてみてください。突風が吹くと、傘の骨は外側に折れ曲がりますよね……」
そう言うと同社プロダクトマネジメント部課長の佐々木智彦さんが、傘の骨の2〜3本を「ポキッ!」。うわっ、いきなり壊れちゃったじゃないですか!?
「いえ、大丈夫です。この傘は、『折れた=破壊』ではなく、あえて『ポキッと折れる』構造にしていますので、折れた状態のまま一度たたんで、開くだけで、ホラ……」
なんと傘は、元どおりのきれいな半円を描いている!
「従来型の『耐風』構造は風を受けて外側に半円を描きますが、風圧で飛ばされて事故につながる恐れも。当社の商品は特許取得済みの技術で、折れて破損を免れるのと同時に、使用者の安全も守ります」
では、どうしてこの商品を開発したのだろう?同部部長の江守佳郎さんが引き取って言う。
「化粧品や健康食品を販売する弊社のお客さまはほぼ女性。お肌や体をサポートする商品を手掛けるなかで、たどり着いたのが環境問題への取り組みでした。“ポイ捨てビニ傘”の多さを目の当たりにし『だったら地球に優しい“壊れない傘”をつくろう!と。お肌を考えUVカット95%』を実現しましたし、さらに売り上げの一部は日本環境協会に寄付して、ゴミの軽減や環境保全に役立てます」
販売開始から1カ月で、すでに2万本を売り上げているというヒット商品だが、今後の展開は?
「子ども用は、前がよく見えるように一部を透明に。事故防止のためにあえてワンタッチにせず、手動開きにして商品化し、早ければ台風シーズンには販売を開始したい。また、女性向けのおしゃれなデザインの商品として、老舗スーパーマーケットの紀ノ國屋さんの『KINOKUNIYA』のロゴが入った傘も、近々販売予定です」
この傘なら、ゲリラ暴風雨のときの安全確保に加えて、プチ社会貢献もできるかも!