昨年発表された厚生労働省の調査結果によると、日本人の平均寿命は女性が約87.14歳、男性が約80.98歳で過去最高を更新した。
だが、一方で、健康な日常生活を送れる期間を示す平均健康寿命は、女性が約75歳、男性が約72歳と、平均寿命より10年前後も短い。つまり、多くの高齢者が約10年もの間、医療や介護を必要としながら暮らしているのだ。
そういった背景もあり、近年では病気を未然に防ぐ予防医学が重要視されてきているが、なかでも「環境要素」という視点が注目を集めているという。これは簡単に言えば、温度や湿度、光、空気といった環境を構成するさまざまな要素のこと。これまで健康に影響を与えると考えられていた運動、食事、メンタルの3つの要素に付加された新しい要素で、「住環境」と密接に関係している。
実際、温度や空気といった住環境を適正に保つことにより健康寿命が延びることは、多くの研究や調査からも明らかになっているという。つまり、毎日多くの時間を過ごす住まいを安全・快適なものにすることが、結果的に健康長寿にもつながるというのだ。
住環境への満足度が高い人はストレスが少なく、主観的な健康観(自分が健康であると自覚している感覚)が高まるという研究報告がある。住環境は日々の小さな不満がたまりやすい場所なので、リラックス効果を高めるために積極的に癒しの要素を取り入れたい。
そこで、日常的な“癒し”を取り入れるためのポイントを紹介。
■犬といっしょの暮らしが“絆形成ホルモン”を分泌
子どもが巣立った後の生活では、犬を飼うのもおすすめ。散歩によって一定の運動量が確保でき、生活リズムも整うので健康効果は大。さらに、犬と見つめあうことで「オキシトシン」と呼ばれる“絆形成ホルモン”の濃度が上がることも証明されている。これにより相手への親和感情が高まり、ストレス緩和効果にもつながるのだ。
■快適なリビングはソファを3メートル以上離して
室内における家族の距離は、つかず離れず3メートルがほどよいとされている。これは、別々の作業をしつつ話ができる距離。リビングは中心を3メートル空けて、相手の姿全体が見渡せるように円周上にソファを配置すると効果的。テレビを見たり読書をしたり、パーソナルスペースを確保しつつ会話もできるのでリラックス効果が高い。
■読書スペースの設置がストレス解消の切り札
ストレス解消には読書がとくに有効であることが、イギリスの認知神経心理学者の研究で明らかにされた。静かな場所で読書を行うと読書前に比べ心拍数が下がり、わずか6分間で60%以上のストレス解消効果が得られるという。本の世界に没頭することで心配や緊張を忘れられるため、小さくても読書スペースをつくるとよい。
■壁紙の色を替えるだけでリラックスできる!?
美しい景色やモノを見るとリフレッシュできるものだが、とくに青い色は色彩学でも神経を落ち着かせる色だといわれている。天窓や高窓があると、いつでも空を見上げられて理想的だが、壁の一部に青い壁紙を張るだけでも効果があるのでお試しあれ!