「体にとってストレスは必ずしも『悪』ではありません。“STAP細胞”が話題になっているのは、体細胞を『酸性の液にひたすだけ』という超カンタンな方法で作られる、多能性細胞とされているから。酸というストレスによって、STAP細胞は目覚めるのです。実はストレスが加わると細胞が活性化されることは、以前から判明しています」
こう語るのは、順天堂大学医学部教授の小林弘幸先生。たとえば、カリフォルニア大学がマウスに突発的なストレスを与えたところ、脳の神経細胞が増殖し、特に記憶力の向上に役立ったそう。ほかにも、細胞にストレスを与え活性化させる実験は、世界中で行われているという。
「とはいえ、ストレスに飲み込まれてしまっては、やはりよくありません。自律神経が乱れ、血管が収縮して血流不足になり疲労が蓄積します。不安やいらだちが手に余るようになってきたときは、無理にはねのけようとせず、その状況を受け止め『不安だ』と口にしてしまいましょう」
ソチ五輪では、それを実証するような出来事がいくつもあったという。銀メダルを獲得した“レジェント”葛西紀明選手は「(心臓が)バクバクしていた」と緊張していたことを認め、口元を緩めることで上半身の力を抜いたそうだ。
「いっぽう、試合前は『調子がいい』と意気込んだ浅田真央選手は、ショートプログラムでまさかの結果に。しかし翌日のフリープログラムでは一転、自己ベストを上回る会心の演技!両選手とも極度の緊張下にあったことを冷静に受け止め、『必ず成功させなければいけない』というプレッシャーをいい意味で『あきらめた』ことによって、集中力が極限まで高められ、『ゾーン』に入れたのでしょう」
「あきらめ」という余裕は、極度の緊張によって失われた呼吸を取り戻し、血管も広げるという。これによって全身の細胞に酸素と栄養がまんべんなく届き、心身ともに本来あるべき能力が、最大限に発揮できるようになるそうだ。
「つらいときは素直に『参った!』と言ってしまうこと。見て見ぬふりより冷静に受け止めることが、ストレスを味方につける、もっとも効率的な方法です」