「健康診断の『B判定』は、多くの項目が重なれば、脳梗塞や心筋梗塞など、重病の危険が高まります。中には、『C判定』より危険な『B判定』もあります。『B判定』の陰で、ひそかに病いは進行しているのです」
そう警鐘を鳴らすのは、20年にわたり20万人以上の人間ドックや健康診断を行ってきた、内科医の奥田昌子先生だ。
「B判定を見て、“まだ大丈夫”と思っていませんか?一般的にB判定は、『経過観察』といわれています。しかし、『経過観察』といっても、単に“とりあえず放っといて様子を見ること”とはまったく違います」
経験の中で、「B判定こそが、病気になるかならないかの境界線だ」と気づいたという奥田先生。今年7月、『健康診断 その「B判定」は見逃すと怖い』(青春出版社)を出版した。
決して油断してはいけないというB判定……。「血糖値」のB判定には、食後だけ高血糖になる「隠れ糖尿病」の可能性がある。B判定を受けても生活を変えずにいると、5年以内に“4人に1人”という確率で糖尿病を発症するという。
「さらに、血圧がB判定の場合には、2人に1人が高血圧に移行しますし、すでに危険な『隠れ高血圧』になっている可能性も。また、食後に中性脂肪が猛烈に上がる『隠れ糖質異常症』(食後高中性脂肪血症)も健診ではB判定になることがあり、この場合、健康な人と比べて、心筋梗塞をはじめ心臓病のリスクが3倍になります。血糖値がB判定の場合、大腸がん、肝臓がん、膵臓がんの発症率も上がります」
また、危ないのが2つ以上のB判定がある場合だ。
「B判定がいくつか重なると、C判定より怖い場合があります。これは、サッカーのイエローカードが2枚出されると、レッドカードで退場させられてしまうのに似ています。それだけでなく“1+1”が3にも4にもなってしまうことがあるんです。その代表として挙げられるのが、メタボリック症候群。内臓脂肪が蓄積している人が、高血糖、脂質異常症、高血圧の3つのうち、2つ以上にあてはまると“メタボ”と診断されてしまいます」
内臓脂肪がたまっていない人は、メタボと診断されることはない。しかしそんな人たちも、肥満、脂質異常症、高血圧、高血糖のうちB判定が3〜4つあれば、それは“メタボ”。それらすべてがA判定の人と比べた場合、心臓病の危険は31倍に跳ね上がる。
「B判定が2つ以上なら、最悪の場合、脳梗塞を引き起こす危険性も考えられます」
B判定とは、「病いへ向かうか、予防できるかの大きな岐路」だと奥田先生は語る。その岐路を発見するため、「健康診断」は受けるべきなのだ。
「健康診断を受ける目的の1つは、現在の健康状態を把握すること。もう1つは、結果をしっかり受け止めて、生活習慣の改善に役立て、将来の病気を予防することです。B判定があったら近くの内科医やクリニックに結果を持参して、医療従事者から説明を受けてください。1年後ではなく、3カ月後、半年後に検査を受けて経過を確認していきましょう。健康診断の結果は、年ごとの変化をきちんと見ることと、項目を関連づけてみることがとても重要なのです」