「40〜50代の女性は、高齢の親の介護や、自身の更年期障害の症状など、疲れやすい。生活に疲弊して、何にも感動しない……そういった無感動な毎日が続くと、神経は老化していくいっぽう。認知症になってしまう可能性が上がります」
そう話すのは、脳神経外科医の工藤千秋先生。工藤先生は、都内にある「くどうちあき脳神経外科クリニック」院長で、これまで39万人を診てきた名医として知られている。
「これまで認知症の原因は、脳に『アミロイドβ』といわれるタンパク質のゴミがたまることだといわれてきました。しかし、最近の研究では、神経をカバーしているミエリンがボロボロに損傷することが原因で、指令と情報の通り道である神経がつまり、認知機能が低下するという説が有力になってきています」(工藤先生・以下同)
認知症になると、「耳が遠くなった」「目が見づらい」、そして「味や匂いが分からなくなった」などの周辺症状が表れる。工藤先生は、神経につまりがうまれ、知覚した情報が脳へ届けられないことが原因だと語る。認知症患者にある「徘徊」などの行動も、神経の老化が原因だという。
「足の筋肉の痛みや疲れなどの情報が脳に伝わらず、疲れを認識できないことから、いつまでも歩き回ってしまったりするんです」
工藤先生は、日常生活のなかで表れる“神経老化のサイン”があると語る。
「暗い色の服を着続けている、音のない暮らしをしている、おいしい食事への食欲を失っている……これらが当てはまる人は、神経が老化してしまっている可能性があります。色や音などを感じる“五感”を使わないことは、神経に刺激を与えていないということ。老化はどんどん進行します」
たまには派手な色の服を着たり、おいしいものを食べたりするだけでも、神経の刺激になるそうだ。