「速やかに見直しを行っていただきたい!」
2,000円で豪華な返礼品がもらえると大人気のふるさと納税。その一方で、高額な返礼品が問題に。国の意向に従わない自治体に対して、野田聖子総務大臣は、先月6日の会見でこう語気を強めた――。
なにをそんなに怒っているのか、総務省市町村税課の担当者に説明してもらおう。
「返礼品の還元率を寄付額の3割以下にすること。つまり1万円の寄付に対して3,000円のお肉の返礼品はいいですよ、という通知を全国の自治体に出したのが昨年4月のことです。それでも、いまだに見直す意向がなく、10億円以上の寄付金を受け入れている12自治体を公表に踏み切りました。約9割の自治体がルールを守っているなか、過熱しすぎたふるさと納税の制度を健全化する狙いがあります」
この“返礼品3割ルール違反”と名指しされた自治体は次のとおりだ。「国から“叱られる”ほどお得な返礼品があったんだ」と、逆に注目を浴びてしまった12の自治体。そんな大人気の品がリストから外されてしまう前に、急いでチェックしよう!
【大阪府泉佐野市】受入額:135.3億円
寄付金受入額を前年より3.9倍伸ばして全国1位(’17年度)になった“関空”のお膝元の市。肉やビール、米、泉州タオル、航空会社「Peach」のポイントギフト、宿泊券など多彩な品物が人気に。平均還元率は4割程度とお得な返礼品も注目。見直しの意向がある。
【佐賀県みやき町】受入額:72.2億円
受入額は前年度の5倍で全国4位に浮上した人口約2万5,000人の町は、ロボット掃除機、液晶テレビ、空気清浄機などの家電、高級「佐賀牛」などの返礼品が人気。寄付金により高齢者の生活支援、人工知能を使った未来型農業などを展開。今後3割超の品は見直す意向。
【佐賀県唐津市】受入額:43.9億円
三大朝市“呼子の朝市”や唐津焼で知られる市は受入額でも全国7位に。特産品「佐賀牛」や玄界灘の剣先イカ、アジの海産物が人気。棚田栽培の「唐津上場産コシヒカリ」や「老舗肉屋の特上ハンバーグ」などグルメ通に評判の品がそろう。価格は再検討に入る可能性も。
【静岡県小山町】受入額:27.4億円
“金太郎生誕の地”でもある町の人気はアイスクリームや「リンガーハット」の全国で使える商品券、工場がある「アイリスオーヤマ」の家電。8月3日現在、見直しは検討していない。
【佐賀県嬉野市】受入額:26.7億円
日本三大美肌の湯「嬉野温泉」で名高い市は宿泊券や肉が人気。専門サイト「さとふる」で上半期1位になった「佐賀牛の切り落とし1kg」は5割超の還元率も下げる方向。
【茨城県境町】受入額:21.6億円
返礼品4割程度のブランド牛「常陸牛」や「県産のお米4種食べくらべ20kgセット」などコスパが魅力。西日本豪雨の被災支援の寄付金の受付けも実施。見直し作業に入っている。
【滋賀県近江八幡市】受入額:17.7億円
近江商人と安土城で知られる市は「近江牛」、アユ、米や地酒、寝具メーカー「東京西川」の高級マットレスなどが好評。3割超の返礼品の見直しや地場産品に力を注ぐ。
【福岡県宗像市】受入額:15.6億円
世界遺産登録の「沖ノ島」がある市は「宗像めんたいこ450g」、宗像産大麦使用の「キリン一番しぼり1ケース」、重量UPした「いちご」の返礼品が大ヒット。還元率は調整中。
【岐阜県関市】受入額:14.1億円
“日本一の刃物のまち”は「高級包丁」だけでなく爪切りやハサミなども充実。寄付金は地場産業の活性化に。「日本刀アイス」や懐かしの「たまごっち」「写ルンです」も登場。
【大分県佐伯市】受入額:13.5億円
日本有数のリアス式海岸が広がる市は干物など海産物が人気。かつては伊勢エビやすしなどの豪華返礼品も。注目は真珠の宝飾品。地元産品であることから見直す予定はない。
【福岡県上毛町】受入額:12.1億円
人口7,000人ほどの豊かな自然が魅力の町。九州産牛肉、ウナギ、ビールなどコスパがいい返礼品がそろう。放し飼いの地鶏の卵は申し込みが急増中。現在“通知”の検討を重ねている。
【佐賀県基山町】受入額:10.9億円
福岡市のベッドタウンでは、「佐賀牛」「肥前さくらポーク」のほか、メーカー、種類が充実したビールのラインナップが魅力。8月いっぱいでビールの取り扱い中止の方向。
年間3,000万円以上も寄付している“ふるさと納税の達人” 金森重樹さんは、「返礼割合3割超」見直しという“ルール”について、次のように語る。
「ふるさと納税は、地域のもっている有形無形の資産をPRする大事なツール。また地域振興、雇用創出など絶大な効果も見込まれます。だからこそ、各自治体は、先を争うように返礼品の充実につとめてきました。いま総務省が言うようにルールが強化されれば、寄付を申し込む私たちにとっても、手間を考えると、あまりメリットがなくなってしまいます。そうなれば自治体間の競争意識もなくなり、また“お役所仕事”に戻るだけでしょう。明らかに、ふるさと納税のブームに冷水を浴びせた“通知”だったと思います」