「共働きが多くなり、それぞれ別々に財布を管理する夫婦も増えました。でも、“お金を貯める”という点で見ると、夫婦で別財布では貯まりにくいんです」
住宅ローンなどの支払いは夫の給与振込口座から、食費は妻の稼いだお金でーーそんな“夫婦別財布”は「貯まりにくい」と指摘するのは、家計再生コンサルタントの横山光昭さん。家計全体のことを、どちらも把握できていないことが、その大きな原因だという。
「自分の担当ではない項目の支出について無関心になるんです。たとえば食費を妻が担当している場合、夫は『夕食、もう1品出してよ』なんて要求したりする。それでいくら支出が増えて、家計にどれくらい影響を与えるかまで考えないんですね。一方で『妻は貯めているはず』と漠然と期待していたりもします」
妻のほうでも「夫が貯金している」と思い込んでいるとーー。
「いざ大きな支払いがあり、そこで初めて『うちには貯金がない』と判明する40〜50代の“別財布”夫婦も多いです。子どもの塾の費用のことで夫に相談したところ、貯金どころか、キャッシングによる内緒の借金200万円が発覚したケースもありました」
高校生の子どもが1人いるこの夫婦の、毎月の手取り収入額は夫が30万円で、妻が12万円。これを別々に管理していたという。
「ご主人にはボーナスがあったので、これで2〜3年かけて借金を返済することにし、財布は“家族財布”1つにまとめてもらいました。そのうえで、月の収入42万円の全額を使いきっていた家計を改善すべく、個々の保険を見直し、携帯電話も格安スマホに。財布を1つにしたことで、食費を含めて毎日、何にいくら払っているかを具体的に洗い出すことができ、半年後には月の支出を36万円にまで抑えられるようになりました。月6万円が貯金に回せるようになったのです」
つまりは“夫婦別財布”で、月に6万円も損をしていたということになる。家計のムダを“見える化”できる“家計財布”は、子どもも巻き込んで家計に取り組むところもポイント、と横山さん。
「お子さんも交えて話し合ってもらったのですが、その中で出てきたのが、塾の費用のこと。最初は5教科受けたいと言っていたのが、じつは3教科でいいことがわかったのです。さらには大学も、成績が優秀な人に給付される奨学金で行けるように頑張る、と。家にどのくらい収入があって、そのうちいくらが自分に使われているかを知ることは、お金の大切さを学ぶことにもなります」
家計をみんなで把握することが、赤字から脱却し、“貯められる家族”になるためには必要なのだ。