「かつては、家を所有することがステータスであり、家族の夢という時代もありました。だが近年は、10月に東日本を襲った台風19号のような、大雨による水害などが全国各地で頻発。“夢のマイホーム”が、経済的に大きなリスクとなる時代になりつつあります」
こう語るのは、さまざまな災害などの統計データをもとに、生活環境のリスク分析を行う、住環境コンサルタントの堀越謙一さん。
たしかに、水害による家屋の倒壊や床上浸水などの被害を受ければ、大きな出費は避けられない。行政からの補助金や住宅支援だけでは、とても金銭的にカバーができないのが現状だ。
「住宅ローンを払いながら、さらに借金するという二重ローンに苦しむ可能性も大いにあり得ます」(堀越さん・以下同)
地球温暖化に伴い、雨量は増え、台風も巨大化している。先の台風19号では、タワーマンションの地下の電源施設が水没し、物件全体が停電した例も記憶に新しい。修繕費用を負担するのは、原則として物件の所有者だ。
「また、自然災害がなくても、建物は老朽化していくもの。故障箇所の修理費用やリフォーム費用も、考えなければなりません。特に危ないのは、収入が一気に減ってしまう老後です。見通しが甘かったり、不幸にも自然災害にあってしまったりすると、マイホームが原因で人生設計が狂ってしまうことだってあるんです」
一軒家であれ、分譲マンションであれ、自分で物件を所有するのはリスクを伴うのだ。
「そこで、私が提案したいのは、“マイホーム”に縛られることのない“賃貸生活”を老後に始めることです。たとえば、すでに子どもは独立していて家にはあなたと夫だけ。夫婦2人で住むには部屋も多くて広すぎるという例もあるでしょう。ならばいっそのことマイホームを売ったり、人に貸して、そのお金を老後資金に回す。そして自分たちは賃貸に住み、豊富になった老後資金で充実したアフターライフを送るという選択肢だってあるんです」
とはいえ、引っ越した先の家賃が高すぎて、困窮したりしては元も子もない。
「夫婦2人で住むなら、1LDK~2DKで、35~40平方メートルの広さは必要です。夫婦で合算した年金をおよそ20万円だとすると、年金だけで生活していくには、月額家賃は8万円以下に抑えたいですね」
「女性自身」2020年1月1日・7日・14日号 掲載