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’17年に厚生労働省が行った健康調査によると、日本で高血圧と診断を受けている人は約994万人。しかし、実際は約4,300万人が高血圧だという推測もされている。

 

「高血圧であっても、自分でそれに気づいていない人がかなりいます。その6割近くが女性です」

 

こう話すのは、循環器疾患が専門で「ミスター血圧」の異名をとる渡辺尚彦先生だ。渡辺先生は常に血圧計を腕につけ、自身の血圧をじつに24時間32年以上にわたって測り続けている。患者さんに対しても、エビデンスとなるデータをとりながら、薬に頼らないさまざまな降圧方法を模索している。

 

しかし、そもそも血圧とは何なのだろうか。そして、なぜ血圧が上がるのがいけないのだろう。

 

「血圧とは、心臓から流れる血液が血管を押す、血管内の圧力のこと。これは心臓が血液を押し出す力と末梢血管の抵抗力で決まるのですが、心臓から送り出す血液量が増えたり、血管内が狭くなるなどの理由で血管内の抵抗が大きくなると、血圧は上がります。心臓が収縮するとき、血液は大動脈を通って動脈に送られます。このときの状態を収縮期血圧(上の血圧)と呼びます。その後、心臓が拡張して弁が閉じるのですが、そのときの状態を拡張期血圧(下の血圧)と呼びます」(渡辺先生・以下同)

 

一般的に、血圧は高齢になるにつれて高くなるという。その理由は、血管自体の弾力が低下したり、血管内が詰まって流れが悪くなったりすることなどが原因だ。

 

「血圧が高くなってくると、血管に関するトラブルのリスクも高くなります。そのため、血圧を正常値内で安定させることはとても大切なのです。通常、上の血圧と下の血圧の差を『脈圧』といい、この差が50~60くらいが正常範囲です。これ以上開いている場合は、動脈硬化が進んでいることを示します」

 

日本高血圧学会では正常域血圧を140mmHg/90mmHg未満としている。上の血圧が140以上、あるいは下の血圧が90以上だと高血圧を診断される。

 

「高血圧は、動脈硬化のほか、心筋梗塞や脳卒中、腎臓病のリスクも高めてしまいます。しかし、高血圧には自覚症状がほとんどありません。静かに病気を進行させ、ある日突然に心筋梗塞や脳出血といった深刻な病気を引き起こすため、“サイレントキラー”とも呼ばれています」

 

加齢以外にも、高血圧の原因には、塩分の取りすぎ、肥満、喫煙、ホルモンの変化、などが挙げられる。

 

「日本人の場合、高血圧の最大の要因は塩分の取りすぎだといわれています。そのため塩分コントロールは極めて大切です」

 

また、女性は更年期を迎えるころから、血圧の変化に気をつけるべきだと渡辺先生は指摘する。

 

「更年期の女性は、女性ホルモンが減少すると同時に血圧が上がり始める傾向にあります。女性ホルモンは血管を拡張させる働きをしてくれるため、『若いころは低血圧気味だった』という人も少なくありません。しかし、そういう人でも、更年期を経ていつの間にか血圧が上がっていたということがよくあります。自覚症状がありませんから、血圧を測定するしか変化に気づく方法はありません。家庭用血圧計で構いませんので、40代以降は日常的に血圧を測ることをおすすめします」

 

「女性自身」2020年2月11日号 掲載

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