「大地震が来たら、外に出ているものはすべて飛んでくると思ってください。とくにキッチンは包丁やハサミといった鋭利なものや割れ物が多く、もっとも危険な場所。フライパンや調理器具を壁掛けするなどの見せる収納がはやっていますが、防災の観点から見れば、大変危険です。飛んできた菜箸が刺さって死亡したというケースもありますから」
そう話すのは、国際災害レスキューナースの辻直美さん。国内外の被災地で看護師として活動するかたわら、その経験をもとにした防災術を発信している。
最大震度6弱を記録した’18年の大阪府北部地震では、大阪府内にある辻さんの自宅も大きな揺れに見舞われたが「調味料が4本倒れただけ」と被害は軽微。一方、同じマンションの隣の家では家具が倒れ、部屋中に物が割れ散乱する大惨事に。
「わが家の防災対策は、物をなるべく外に出さず収納すること、そして100均グッズを使った備えがメーンですが、それだけでもここまで差がつきます」
辻さんがいちばんに対策を勧めるキッチンの防災だが。
「対策をしても過信は禁物。揺れを感じたら、すぐにキッチンから逃げること。最近のガスコンロは、揺れを感知して自動で火が止まるものがほとんどなので、必ずしも慌てて火を止めに行く必要はありません。防災にまつわる常識は年々更新されています。家具転倒防止によく使われている突っ張り棒も、大きな揺れでは効果が期待できないことがわかってきています。防災センターなどを訪れ、最新の情報にアップデートしましょう」
「女性自身」2020年3月17日号 掲載