「いま『青天を衝け』で渋沢栄一を演じてくださっている吉沢亮さんはとても爽やかなイケメン。祖父とは違いすぎて……(笑)。けれどあのまっすぐな生命力は、祖父もこうであっただろうと思えます。脚本が素晴らしく、毎回の放映を感謝しながら拝見しています」
穏やかにほほ笑むのは渋沢栄一の孫でエッセイストとして活躍する鮫島純子さん(98)。
渋沢栄一は、農家の息子として生まれ、後に明治の元勲に並ぶ仕事をやり遂げ、「資本主義の父」として称えられる。その一代記が描かれるNHK大河ドラマ『青天を衝け』は高視聴率を記録。’24年に刷新される一万円札の顔になることも決定しており、まさに渋沢ブーム到来だが、その素顔を記憶する鮫島さんによるとーー。
「とにかく優しく穏やかな人だったことを今でも覚えています。『よう来られたな』と、毎度訪問のたびに榮太樓の梅ぼ志飴を、餌をねだる子雀のような口に入れてくれました。突然訪ねてこられた方々の身の上相談にも応じている場面も記憶に残っております」
鮫島さんは渋沢家の三男で実業家渋沢正雄氏の次女である。
「私の祖母は、後妻の兼子。よいところ取りで、先妻の千代さんがとてもご苦労をされたようです」
というように『青天を衝け』で橋本愛が演じる千代は栄一の最初の妻。内助の功でけなげに夫を支えるがコレラに感染し早逝する。栄一は国事に没頭し、家の切り盛りから親の世話まで千代に任せきりだったというのも史実どおり。
「祖父は晩年、国事に奔走して家を任せ放しにしたため、若くして亡くなった千代さんへの思いから宝光院様という戒名をつけて功績を称え、後妻の子や孫であるわれわれも千代さんを敬っています」