画像を見る

全国19都道府県に発出されていた緊急事態宣言が解除されてから約1カ月。

 

新規感染者数は全国的に激減。東京都でも7日間の平均感染者数が1年4カ月ぶりに50人を下回り、酒類の提供や営業時間の制限もなくなり、夜の街に人出が戻っている。その一方で、多くの人の心にあるのが“第6波”への不安だ。

 

グラフ(画像参照)を見てほしい。東京都での新規感染者数が来年1月以降から急激に増加し、2月中旬には1日当たり1万人を超えるという試算である。今年8月の第5波の都内の感染者数のほぼ2倍になるということだ。この試算をした、東京大学大学院経済学研究科の仲田泰祐准教授は次のように語る。

 

「試算は、年末までに全人口の8割が2回のワクチン接種を終え、11月上旬から時短営業やイベントの人数制限などが解除されて、社会や経済活動のアクセルを強く踏んでいると仮定しています。

 

1人の感染者が何人に感染させるかを示す『基本再生産数』は3.75で、医療受入れ態勢を現状の1.5倍と想定しました」

 

ピークを過ぎると感染者数が急激に減少するのは、医療が起こり、このままでは適切な治療を受けられないという人々の恐怖心が、感染リスク回避行動につながると考えられるからだという。

 

それにしても1日1万人の感染者数との試算結果は衝撃的だ。

 

「試算は設定によって結果が大きく変わってくるため、必ずしもそのとおりにいくわけではありません。コロナ禍には、感染者数が増えるリスクと同時に、その背後で社会活動が制限されることによる経済の停滞や自殺者の増加、健康や文化、教育への影響もあります。試算をした目的は、その両方のリスクを考えながら、医療体制を整えたり、私たちの行動を考えたりするきっかけにつなげたいという思いからです」

 

来年2月にピークの予測も…専門家に聞く「コロナ第6波」の備え方
画像を見る 【グラフ】第6波の感染拡大シュミレーション

 

年末年始にかけては行事が盛りだくさんで人流も増加。本格的な冬を迎え、気温がぐっと下がる。もはや第6波は訪れるものだと認識して気を抜かないことが大切だ。

 

次なる感染拡大の波に備える有効な対策はあるのだろうか?

 

「私たちは昨年コロナ禍での冬を経験しているうえに、ワクチンの接種率もかなり上がっています。ウイルスとの闘い方もそれに応じて変わってくるでしょう」

 

と語るのは、国立病院機構仙台医療センターの西村秀一ウイルスセンター長だ。

 

「コロナウイルスは、呼吸やせき、くしゃみや大声を出すなどしたときに出る液滴が空中に浮いている状態の“エアロゾル粒子”に含まれます。その粒子を吸うことで感染が起こります。冬は乾燥しているため、粒子が小型化。鼻やのどにとどまらずに、肺の奥まで直接入り、肺炎を発症させるリスクが高くなります。空気の流れに乗って運ばれるウイルスをいかに避けるかが重要です」

 

そのうえでカギを握るのが、マスクと換気だ。

 

「感染者数が激減した今は、そう厳しく着用を求める状況ではないですが、流行再燃時には、十分な性能がある不織布マスクを隙間なく着用することが大切です。屋外の密でない状況ならマスクを外しても問題ありません。マスクが必要なとき、そうでないときのメリハリを上手につけましょう。これからの季節は、室内の換気がおろそかになりがちですが、常に空気を入れ替える意識を持ってください。特に冬は窓を1カ所ほんの5センチくらい開け、暖かい空気を外へ逃がし、冷たい空気を中へ入れる温度差換気が効果的です」

 

いたずらに恐れて生活する段階から、一歩踏み出すことが大切だという。

 

「ただ、ワクチン接種を済ませていても、感染拡大の局面では重症化リスクの高い高齢者と会うときには細心の注意を払うべき。また危ないと考えられる場所には近づかない心がけも必要。とはいえ、息が詰まるような感染対策だけでは心身ともに疲弊します。正しい知識を持ち、流行状況や理屈にあった有効な対策をすることが重要です」(西村先生)

 

第5波までで得られた経験をもとに、“正しく怖がる”こと。そんな感染予防が求められている。

【関連画像】

関連カテゴリー: