終わらないコロナ禍で、労災申請が急増しているのを知っていますか? 私たちがもらえはずのお金を、忘れずに受け取るためにはどうすればいいでしょう。
“労災”の基本に立ち返り、荻原博子さんが解説してくれましたーー。
■申請の件数が14倍に急増した背景
コロナ関連の労災申請が急増しています。労災(労働者災害補償保険)とは、会社に雇用される方の仕事中や通勤途中のけがや病気、障害、死亡などに補償を行う制度です。労災は、労働者を1人でも雇う会社に加入の義務があり、保険料は全額事業主が負担します。また、正社員だけでなく、パートやアルバイトも労災の対象です。
新型コロナ感染症について、当初は医師や看護師、介護職などを労災対象とするものの、職場クラスターなどへの対応があいまいでした。そこで厚生労働省が対象を明確化。
(1)感染経路が職場だと明らかな場合
(2)感染経路が特定できなくても、感染者が出た職場での業務や不特定多数への接客など業務での感染リスクが高い場合
(3)業務以外で感染したと断定できない医師や看護師、介護職
(4)コロナ後遺症で治療が必要な場合
上記を労災の対象としました。
しかし、労災が認められ補償金をもらう労災事故が多くなれば、会社が払う保険料が上がるため、申請させない“労災隠し”がよく起こります。そこで’22年1月から、新型コロナ関連ならいくら労災給付が増えても保険料は変わらない特例措置をとりました。
これを受けて労災申請は’22年1月の582件から、2月は1千395件、3月は5千934件で過去最高。4月はさらに増えて8千98件と、1月の約14倍に急増したのです。
■労災はパートも対象! 忘れずに申請を
コロナ関連の労災申請は労働基準監督署の調査を経て、3つの補償給付が受けられます。まずは、治療費が無料になる「療養補償給付」です。コロナ発症時の入院などは全額公費負担。患者は無料で治療を受けられますが、後遺症は通常どおり現役世代なら3割負担です。労災が認められればこれらが無料になり、支払った分も返金されます。
次は仕事を休み給料が支払われなかった日の「休業補償給付」です。休業4日目以降、給料の約8割が支給されます。ちなみに休業3日目までは、会社に給料の6割を支払う義務があります。
休業補償といえば、業務上以外で発生した理由で休む際に、会社の健康保険から支給される「傷病手当金」もありますが、給料の約6割。労災のほうが手厚いです。さらに亡くなってしまった方の遺族には「遺族補償給付」も。
ここで覚えていただきたいのは、労災保険は原則、労働者自身が手続きを行うこと。先述のとおりパートも対象なので、「職場で感染した」と思う方は、最寄りの労働基準監督署に相談してください。
ただし、労災申請には期限があります。療養補償給付と休業補償給付は2年間、遺族補償給付は5年間です。’21年のデルタ株にかかった方などは、期限まであと1年ほどなのでお早めに。最近はマスクをいつ外すかが議論の的ですが、まだ不安があります。一日も早く、心底安心できる日が来てほしいものです。