「はしかは感染力が非常に高く、免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症するといわれています」
5月16日の会見で、このように警鐘を鳴らしたのは加藤勝信厚生労働大臣。4月下旬、日本国内で3年ぶりにはしかの感染が確認されたのだ。
「4月27日、インドから帰国した男性が、発熱などの症状を訴え、はしかに感染していることがわかりました。その男性は4月23日に、新神戸から東京までの新幹線に乗車していたのですが、同じ新幹線に乗り合わせた30代女性、40代男性への感染も5月12日に相次いで判明したのです。
新たに感染した40代の男性は症状が出た後の5月4日にも三島から新横浜までの新幹線に乗車していたため、そこからの感染拡大も懸念されています」(全国紙記者)
さらに、5月15日、神戸市でもはしか患者が確認された。こうした報道にふれても、はしかは現在では“過去の病気”“子供がかかる病気”と捉えている人は多いのではないだろうか。
だが、五良会 竹内内科小児科医院の五藤良将先生はこのように受け止めている。
「日本でも’16年に関西空港の空港職員を中心に流行。’18年には沖縄観光に来た台湾人から、沖縄県内での流行に発展しました。このときには、名古屋でも沖縄旅行をした男性から女性が感染するなど、愛知や東京などにも感染が広がっています。
今回のケースも、新幹線内で感染が確認されたことが不安材料です。ゴールデンウイークで人の移動が多かったので、感染がこれ以上、広がらなければいいのですが」
五藤先生がこうした懸念を抱くのは、はしかが非常に強い感染力を持つためだ。国立感染症研究所の資料によると、免疫のない集団に一人発症者がいた場合、二次感染するのはインフルエンザなら1〜2人だが、はしかの場合は12〜14人も感染するというのだ。
「単純計算すると、インフルエンザの10倍ほどの感染力の強さといえます。実質、ワクチン接種や過去に自然感染して免疫を持っていなければ、ほぼ100%感染する病気です」(五藤先生、以下同)
ひとたび感染すれば、無症状患者はほとんどおらず、90%以上が発症するという。
「潜伏期間は10日から12日ほど。カタル期といわれる初期段階では、風邪症状が起き、2〜4日は38度前後の熱が出たり、せき、くしゃみ、鼻水、目やにや目の充血などの症状が出ます。このカタル期の感染力が強いのですが、風邪と同じ症状のため、はしかかどうか見分けがつきません」
特徴的なのは、一度熱が下がった後、再び熱が上がり、発疹期に入ること。
「コプリック斑という、頰粘膜にできる白いぶつぶつが出始めたり、体中に細かい赤い発疹がつながるように広がります。
基本的に薬はないので、対症療法となります。一般的には、風邪薬にも利用される、カロナールといわれるアセトアミノフェンが処方されます」
はしかで怖いのは、約30%の患者が合併症を発症することだ。とくに合併症の半数を占めるのが肺炎だ。
「肺炎は高齢者の場合、死亡することもある病気です。また1千例に0.5人から1人と頻度は低いものの、脳炎の合併症も起こります。ウイルスが脳に入ることで意識障害が起きたり、最悪の場合は死に至ります」