「約40年にわたり世界25カ国61の長寿・短命地域を調査してきましたが、日本食は長寿食としてとても優れていることは間違いありません。唯一残念な点が『塩分が多い』こと。そんな和食の欠点を補うのがヨーグルトなのです」
と語るのは京都大学名誉教授の先生(85歳、医学博士)。長寿の秘密を探るべく、WHO(世界保健機関)に働きかけ、世界中を調査してきた現役の研究者である家森先生。妻の百合子さんも81歳で現役の小児科開業医だ。
そんな2人が実践している「世界最高の健康長寿食」を紹介した『80代現役医師夫婦の賢食術』(文春新書)が話題だ。
家森先生に詳しく聞いてみよう。
「日本食が長寿食として優れているのは、日本人の平均寿命(女性87.57歳、男性81.47歳)で世界一を誇っていることで明らかです。カギを握っているのは大豆と魚。豆腐や納豆などの大豆製品に含まれる『イソフラボン』は、突然死を招く心筋梗塞の引き金となる動脈硬化や高血圧の予防に有効です。また魚に多い『タウリン』というアミノ酸の一種は、血圧を下げ、中性脂肪やコレステロールを減らし心筋梗塞などのリスクを低くします。
大豆製品と魚を日常的に多く取っている人は、心筋梗塞といった若くても命を落とす心臓病のリスクが低くなり、平均寿命を延ばしているのです」
日本人の長生きのは大豆と魚にあるようだ。では、和食の欠点である「塩分」は、長寿にどんな悪影響があるのか?
「日本人は平均寿命こそ長いものの、自立できる期間である健康寿命との差は10年。そこには塩の取りすぎが深く関わっています。塩分の取りすぎは高血圧を引き起こして脳卒中、心臓病、胃がんのリスクを高めます。なかでも脳卒中は死に至らなくても寝たきりや認知症の原因にもなり、健康寿命を大きく阻害してしまうのです。
じつは、日本人で大豆と魚を日ごろから多く取っている人は、1日平均12.5g(WHOの目標値5g未満)も塩を取っています。逆に大豆や魚を食べない人は8.1g。和食では、大豆や魚を食べるとき、どうしても塩分が増えてしまうのです」(家森先生・以下同)
たしかに冷ややっこにはしょうゆ、魚は塩焼きと、日本食において大豆と魚は塩分との関わりが深い。
「そんな『塩の害』から身を守るためには、塩分摂取量を減らすことはもちろん大切です。さらに塩の害を打ち消してくれるカリウム、カルシウム、マグネシウムが多く含まれているヨーグルトを食べることがポイントです。
ヨーグルトに含まれている乳酸菌などの菌は、健康に重要な働きをする腸内細菌の善玉菌を増やして腸の働きを助けたり免疫力を上げたりしますが、乳酸菌などは腸内に長くとどまるわけではありません。そのため毎日、ヨーグルトを取ることが重要なのです」
減塩を心がけたうえで、ヨーグルトをプラスすれば、世界最高の健康長寿食になるとのことだが、毎日ヨーグルトを食べるのは、なんだか飽きてきそうな気も……。
「私は朝食に、ヨーグルト(無糖)にさまざまなものをトッピングします。大豆の粉であるきなこ、タウリンを取るためにじゃこやとろろ昆布、ごま、納豆、バナナやドライフルーツ、くるみやアーモンドなどのナッツを入れることもあります。健康効果の高い食材を組み合わせることで、飽きないだけでなく、非常にバランスのよい食事になります。朝にヨーグルトをきちんと取っておくと、昼夜に塩分を取っても、その害を打ち消してくれるのです」
実際に、記者が「ヨーグルト+とろろ昆布」を試してみたところ、いつものデザート感覚ではなく、サラダのようだ。オリーブオイルを少し垂らしてみたらコクが出てクセになりそうなおかずに。血液をサラサラにする効果があるアマニ油、エゴマ油などを加えてもいいかもしれない。
家森先生によるとヨーグルトの量は200gがおすすめで、甘味が欲しい人ははちみつを足してもいい。
「ヨーグルトに不足している栄養素のひとつは食物繊維。乾燥野菜は食物繊維が豊富で、便秘解消としても最適なトッピングです。食べる少し前にヨーグルトに入れておけば、軟らかくなっておいしくいただけます」
さあ、明日から、朝の習慣にしてみてはどうだろう。