最近「スキマバイト」や「スポットワーク」と呼ばれる働き方が広がっています。
これらは空き時間に数時間だけ働くこと。限られた時間だけ働きたい人と働いてほしい雇用主をつなぐ「タイミー」などのマッチングアプリに登録し、働きたい仕事にエントリーすると、採用通知が早く届いてすぐに働けます。履歴書や面接もなく簡単に働き始められる点、また、その日働いた給料が即日支払われる点をメリットとして人気が高まっているのです。
スキマバイトの仲介業者らでつくるスポットワーク協会によると、?2024年5月末の登録者数は約2千200万人。2023年3月末から1年余りで2.2倍と急増しています。
仲介業者はパイオニア的なタイミーに続き、「シェアフル」「LINEスキマニ」「メルカリ ハロ」などが参入。登録者数が増える大きな要因でしょう。
利用者としてまず思い浮かぶのは、単発アルバイトとして利用する若者ですが、会社員の副業なども多いです。残業時間の短縮や週休3日制の導入などで労働時間が減った会社員は、給料が増えないのに物価が上がるダブルパンチで、副業しないと厳しい方が多いのでしょう。定期的なダブルワークは難しくても、スキマバイトなら働きやすいことも一因だと思います。
ほかにも、55歳以上の利用が増えているといいます。これはタイミーだけの集計ですが、’23年3月に約18万人だった55歳以上の登録者数が、1年後には約38万人と2.1倍に増えています。働く理由は「生活費を補うため」が最多。「年金など固定収入だけでは暮らせない」中高年も多いのでしょう。
■バイト先のトラブル経験者は半数を超す
働きたい方が、自分の好きな時間に好きな仕事を選んで働けるスキマバイトはとても便利な仕組みですが、問題点もあります。
社内規程の作成などを行うKiteRaの調査では、スキマバイト先でのトラブル経験者は51.4%と、半数を超えています。
もっとも多いトラブルは「仕事内容が聞いていたものと違う」52%、次いで「労働時間や給与などが違う」46.9%。「パワハラやモラハラが横行した」「勤務中のケガを労災認定されなかった」という見逃せない声も。
さらに、トラブルがあっても「どこに相談したらいいかわからない」人が44.3%。これは大問題でしょう。「次からその職場を選ばない」などの消極的な抵抗では悪質な雇用主の思うつぼです。
スキマバイトの実情を見ると、日雇い労働を思い起こします。かつて日雇い労働は問題の多い職場が目立ちましたが、最近は行政の目が届くようになりました。いっぽう、スキマバイトにはまだサポート体制がありません。
仲介事業者や行政には、早急なサポート体制の構築を望みます。とはいえすぐには難しいので、いまスキマバイトを利用する方は注意深く職場を選んで、自主防衛に努めてください。