ふるさと納税はお得な制度だが意外な落とし穴が潜んでいた(写真:タカス/PIXTA) 画像を見る

ふるさと納税は、寄付額のうち2千円を超える分が住民税などから控除され、実質2千円で寄付先から返礼品がもらえるお得な制度だ。昨今大人気で、2023年度の寄付額はついに1兆円を突破し、過去最高を更新した。

 

ふるさと納税は寄付者の年収や家族構成などにより、控除される年間上限が決まっている。つまり2千円以上の持ち出しなく、ふるさと納税が行える上限だ。年末が近づくと「控除上限ギリギリまで使わないともったいない」とふるさと納税の駆け込み利用が増える。

 

「ふるさと納税の控除上限額は、たとえば医療費控除の額などによっても変わります。また、うまく手続きできないと、ふるさと納税とカウントされず全額自己負担の寄付になることもありますよ」

 

そう話すのは、ファイナンシャルプランナーの山中伸枝さん。ふるさと納税サイトの「簡単シミュレーション」では正確な控除上限が算出されず、思惑と違う“自腹の寄付”になることもあるそう。山中さんに駆け込みふるさと納税の思わぬ落とし穴の事例を聞いた。

 

【1】Aさんは専業主婦の妻と2人世帯。昨年までは年収600万円だったが、今年2月の役職定年で年収が3割ダウン、420万円になった。 ふるさと納税を毎年利用するAさんは、年初に昨年の年収600万円でシミュレーションし、控除の上限は6万9千円だった。だから、年末までに6万9千円の枠を使い切ろうと意気込んでいたが――。

 

【NGポイント】年収が変われば控除の上限も変わる。ふるさと納税の控除額を決めるのは、今年の年収だ。年収が420万円なら控除の上限は3万6千円。6万6千円のふるさと納税を行ったAさんは、差額の3万3千円は控除を受けられず、自己負担の寄付となった。

 

「ふるさと納税は返礼品をもらえるお得な制度ですが、節税効果はありません。お住まいの自治体に払う住民税などを、お好きな自治体にふるさと納税という形で“前払い”することで、その分翌年の住民税などを減らせるだけ。払うべき税額は変わらないのです。

 

ただ年収が下がれば納税額も下がって、控除の上限額も低くなるのは当然です。同様に子どもが結婚した、老親と同居したなど家族構成の変化もふるさと納税の控除上限に関わりますから、注意してください」(山中さん、以下同)

 

【2】会社員のBさんの年収は500万円、妻は扶養の範囲内でパート勤めをしている。Bさんは、老後資金づくりに今年からiDeCoを始めた。掛け金は月2万3千円。だが、年収や家族構成に変化はないので、ふるさと納税の控除上限は去年と同じ4万9千円だろうと判断。控除枠ギリギリまで活用しようと返礼品を物色している。

 

【NGポイント】iDeCoは掛け金全額が所得控除の対象となるので、納税額が下がる。すると、ふるさと納税の控除上限額も下がる。iDeCoの掛け金を控除すると、Bさんのふるさと納税の控除上限は4万2千円。差額の7千円は控除を受けられず自己負担の寄付になる。

 

「iDeCoは老後資金作りにとても有効なツールで、節税効果も高いので、積極的に活用してほしいものです。ただ、iDeCoで節税すると、その分ふるさと納税の控除上限は下がります。ふるさと納税は控除上限ギリギリより余裕をみての利用がおすすめです」

 

【3】最近、職場ではふるさと納税の話題で持ち切り。Cさんは同僚から「お得なのに、まだしていないの?」と言われ、初めて自分名義のふるさと納税を行った。

 

【NGポイント】実はCさんは“103万円の壁”を超えずに働くパート主婦だった。つまりCさん自身は税金を払っていない。

 

ふるさと納税は先述のとおり税金の前払い。税金を払っていない人は前払いもできず、Cさん自身がふるさと納税をしても控除は受けられない。

 

1万円のふるさと納税だと、1万円を全額自己負担で寄付し、3割=3千円相当の返礼品をもらったことに。寄付は尊い行為だが、自腹で寄付するつもりではなかったCさんは損した気分を味わった。

 

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経済ジャーナリスト

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