入院中は高額療養費制度で対応できるが、がんとの付き合いは生涯続く。思わぬ収入減も(写真:metamorworks/PIXTA) 画像を見る

物価高が続き、家計が厳しい。食費などの節約では“焼け石に水”だと嘆く人も多いだろう。

 

「固定費を見直しましょう。なかでも、保険の見直しが効果的です」

 

そう話すのは『1日1分読むだけで身につく保険の選び方大全100』(自由国民社)の著者で、ファイナンシャルプランナーの長尾義弘さん。子供が大学を卒業し独立した世代には「生命保険は必要ない」と言う。

 

生命保険は、大黒柱が亡くなっても子供が生活費や学費に困らないよう、大きな死亡保障を選ぶ人が多い。だが、子供が独立したら、その役目は終了。大きな死亡保険金はいらないので、生命保険は解約してもいいという。

 

また、中高年は自分の健康に不安を持ち「医療保険は必要」と考える人が多いが、長尾さんは「医療保険こそ不要」と断言する。

 

「公的な健康保険があるので、医療費は現役世代なら3割負担です。そのうえ『高額療養費制度』も利用できます」(長尾さん、以下同)

 

高額療養費制度とは、1カ月に払う医療費が高額な場合、申請すれば一定額以上は払い戻される制度だ。一般的な収入の人なら100万円の医療費がかかっても、自己負担は月9万円程度に抑えられる。

 

「医療保険に加入しなくても、貯蓄でカバーできるでしょう。医療費は大きなリスクではありません」

 

長尾さんが以前14日間入院し手術を受けた際、かかった費用を見てみよう。高額療養費制度を利用して医療費の自己負担は8万9千円。差額ベッド代と食費などで合計約14万円払ったという。

 

仮に一般的な医療保険に加入していたら、日額5千円の入院給付金が14日分で7万円。手術給付金が1万円で合計8万円を受け取ることになる。 いっぽう保険料は月3千円だとしても、1年で3万6千円、2年3カ月で8万1千円払うことに。

 

「2年3カ月以上加入していたら、受け取る保険金8万円より、払う保険料のほうが多くなる。つまり“損”することになります」

 

最近は入院期間が短くなって、入院日額〇円タイプの医療保険の存在意義は薄れている。 民間保険はすべて不要だろうか。

 

「がん保険は加入する価値があると思います。がんも医療費リスクはありませんが、ほかの病気にはないリスクが2つあるからです」

 

がん特有のリスクの1つは、治療が長期化し、収入が減ることだ。

 

「働きながらがん治療をする人は増えていますが、体調が悪く仕事を休んだり残業ができない日もあるでしょう。そのため、休職や退職を決断する人もいます」

 

がんになってから収入が「平均22%減少した」というデータも(2020年、ライフネット生命保険)。

 

もう1つのリスクは、自由診療などで医療費が高額化することだ。

 

実は、日本の新薬認可は遅れている。欧米では承認済みのがん関連の医薬品が、日本では193品目も未承認薬や適応外薬だというのだ。

 

「未承認薬は、健康保険の適用外ですから10割負担です。最近の医薬品は超高額で数百万~数千万円かかるものも珍しくありません。

 

がんの治療に未承認薬が有効な場合もあり、高額治療に備えておく必要があります」

 

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