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就寝中や運動中のこむら返り。突然襲ってくる激痛に動くこともできず、苦しむ人は多い。しかも50歳以上の人のほとんどがこのこむら返りを経験しているのだ。

 

こむら返りはこれからの時季に起こりやすい。これは寒さや冷えによって筋肉の緊張や血管の収縮が発生し、血流が悪くなるからだと考えられている。

 

そもそも、こむら返りはなぜ起こるのだろうか?

 

「人間の体は、骨に沿う骨格筋を伸び縮みさせることで姿勢を保ったり、動いたりしています。私たちが連想する筋肉はこの骨格筋のこと。立っている状態からゆっくりと座る場合、太ももの前側の大腿四頭筋が伸び、太もも裏側のハムストリングスは縮みます。

 

このように、すべての筋肉にはその伸び縮みをコントロールする『筋紡錘』と『腱紡錘』が備わっています。筋紡錘は筋肉の中にあり、筋肉の伸びすぎを感知します」

 

こう話すのは、整形外科医で医療法人社団円徳理事長の北城雅照先生だ。

 

「今、伸びすぎているよ」と筋紡錘が脊髄に知らせると、脊髄が、「縮めろ」と指令を出すため、筋肉が縮む。そして腱紡錘は筋肉と腱の間にあり、伸びすぎも縮みすぎも両方感知するため、「縮みすぎてるよ」と脊髄に伝えると「伸ばせ」と指令が出て筋肉がゆるむという仕組みだ。

 

「もし腱紡錘が加齢や疲労、そのほかの理由で誤作動を起こし、信号を脊髄に送らなかったら、筋肉はどこまでも縮もうとしてしまいます。

 

筋肉が縮むと、血管まで圧迫されて血流が悪くなります。血の流れが悪化すると、筋肉に必要な酸素が届かなくなり、プロスタグランジンという物質を筆頭に、細胞が異常事態を知らせる物質をせっせと出します。この物質が鋭い痛みの原因であり、こむら返りの正体です」(北城先生、以下同)

 

筋肉のけいれんは、体を動かす筋肉ならどこでも起こる可能性があるが、6割以上がふくらはぎで起こっている。

 

「抗重力筋と呼ばれるふくらはぎの筋肉は、常に働いている筋肉で疲れがたまりやすい。そして心臓から遠く、血流が悪くなりやすいのも関係しています。また、足元は冷えやすいため、これらの要因が重なって、夜中に足がつりやすいのです」

 

では突然のこむら返りに襲われたらどうすればいいのだろう。

 

「『かかとプッシュ法』を試してみてください。

 

この動作でアプローチしているのは、かかととつながっているふくらはぎの腱の部分です。かかとを押す動きで、この部分を刺激していきます。これを何度か繰り返すことでふくらはぎの筋肉の収縮が収まり、痛みも和らぐはずです」

 

この方法で、先生の患者さんたちはもちろん、記者も非常に救われた。ちなみに記者は、かかとプッシュ法を試して30秒で痛みがす~っと消えたのを実感している。

 

なお、ふだんの生活のなかで行う、こむら返り予防の方法もある。それが「こむら返りリセット法」だ。

 

「これで大切なのは足首の関節を可動域の限界まで動かすこと。これにより、腱紡錘にしっかりと刺激を与え、センサーの誤作動=こむら返りが起こらないようにします。片足30秒、両足1分を毎日の習慣にしてほしいですね」

 

ところで、たまに起こる一過性のこむら返りであれば、病的な異常性がみられることはほとんどない。しかし、週に3回以上など頻繁に起こる場合は、注意が必要だ。

 

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