「高市首相が掲げる“サナエノミクス”は、足元の物価高対策としてさまざまな経済施策を打ち出しています。
しかし、その効果を打ち消してしまう水準にある物価高騰は収まりそうもなく、今年も景気回復を実感することは難しい。家計は依然、苦しいままでしょう」
2026年の私たちの家計についてこう指摘するのは、第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生さんだ。
高市早苗首相は「物価高への対応を最優先」として21.3兆円を投じ、自治体へのおこめ券の配布推奨や子育て支援の給付金措置、冬季の電気・ガス料金の補助を打ち出し、ガソリンの暫定税率も廃止になったばかりだが……。
「これらを合わせても、物価上昇による影響の約4割程度しかカバーできません。物価高騰がもたらす家計負担の6割は残ったままなのです」(熊野さん、以下同)
サナエノミクスで謳われているのは【大胆な金融緩和】【機動的な財政出動】【大胆な危機管理投資、成長投資】。高市内閣発足以後、日経平均は過去最高となる5万円台を記録し、内閣は複数の世論調査で7割を超える高い支持率を誇るなど、景気のよさそうなニュースが聞こえてくるものの、私たちの生活がすぐに上向くとはいかないという。
「家計全体でいうと、2026年も食料品の負担が大きくなります。おこめ券や給付金などの支援策も一度使えば終わりで、経済効果は限定的でしょう。
エネルギー価格はピークを過ぎて値下がりし、一定の落ち着きをみせそうですが、一度上がった食料品の価格が下がることは期待できません」
帝国データバンクによると、2025年の飲食料品の値上げは2万609品目。2年ぶりに2万品目を超える規模の値上げラッシュとなった。“令和の米騒動”など、生活必需品の値上げに泣かされた家庭も多かっただろう。
年が明けても、おせち料理の平均価格が昨年比1千54円上昇(3~4人前サイズの3段重、帝国データバンク調べ)と、値上げの波は収束しそうにもない。
主な原因は円安だ。昨年12月19日、日銀は政策金利を30年ぶりとなる高水準の0.75%程度まで引き上げることを決定した。日米の金利差は縮小したが、円高に振れる気配は見られていない。
「円安の大群が押し寄せてきているなかで、日銀が0.25%小刻みに金利を上げても、円安圧力にのみこまれてしまうため、ほとんど効果は期待できません。インフレはこのまま続くと予想しています。
物価高の主な原因は円安ですから、その“元栓”を閉めない限り物価高は続くでしょう。火が燃え広がった後にどれだけ対策をしても、原因を消さなければ、火事は収まりません」
積極財政も、焼け石に水になってしまうのだろうか。
お金のプロの予想も厳しい。ソニー損保が発表した「家計に関するファイナンシャルプランナー200名調査」では、73%以上のFPが、「家計がよくなることはない」と予想している。
さらに、「値上げ傾向が続く」と答えたFPはじつに8割以上。前出の熊野さんも指摘するように、負担は食品が大きく、特に輸入品に頼っているパンやシリアル、スイーツ類が爆上がりしそうだ。家計にとって“史上最悪”の状況が更新されていくことが見込まれている。
ファイナンシャルプランナーで節約アドバイザーの丸山晴美さんも同様の見解だ。
「円安の影響が残り“粘着質な値上げ”はまだ続きそうです。ただ、’25年は『値上げに始まって値上げに終わった年』だったので、それに比べると少なくとも今年前半の値上げラッシュは一定程度落ち着くのでは。とはいえ、天候不良や鳥インフルエンザなどのコントロールできない部分での野菜や卵の価格の乱高下もあるでしょう。そして何より、2026年度は人件費の高騰による値上げが重くのしかかりそうです」
深刻な人手不足を背景に、企業は働き手確保のために賃上げをする。その一部がサービスや商品の価格に転嫁されることで値上げが進む。代表格は外食サービスだ。
「食品の高騰に加えて、人件費がかさむ飲食店の値上げの進行は止められないでしょう。
そこにドライバー不足などの影響で物流費が加わり、ファミレスやハンバーガーチェーンなど身近な飲食店でさえ、さらに価格転嫁が進み、気軽な外食はしづらくなりそうです」(丸山さん)
家計苦境が尾を引くなか、2026年もお金に関する制度の“改悪”が相次ぐというからたまらない。
「ふるさと納税はポータルサイトのポイント還元が廃止されて、お得度が減ったばかり。そのほか、健康保険料のさらなる引き上げが見込まれています。
また、この1月から、退職所得控除の『5年ルール』が『10年ルール』に変更されました。iDeCoや退職金を受け取るタイミングによっては、税負担が大きくなる恐れがあるんです」(丸山さん)
止まらないインフレを前に、家計はどれほどの影響を受けるのだろうか。前出の熊野さんが語る。
「2026年度に追加で家計にのしかかる負担は、一世帯当たり年17万円ほどになりそうです。それが、所得税減税や物価高対応の給付などで、4人家族の場合で年間8万円ぐらい負担が軽減される試算。ただ、残り9万円は家計を圧迫することに。対策としては1に節約、2に資産運用、3に副業で収入を増やして乗り越えていくしかありません」
節約も、これまでのやり方を変え、さらなる徹底が求められる。
「外食費が家計を圧迫するのは目に見えているので、前提としては自炊の頻度を増やしていくこと。自炊にあたっても、頻繁に使う食材の見直しが必要です。たとえば“節約お肉”と言われてきた鶏むね肉は、過去2kgで500円程度だったのが、今では倍以上。代わりに、豚こま肉が割安で使いやすくなっています」(丸山さん)
引き続き、極力ムダを省く意識が不可欠だ。
「支出削減の効果が見えやすく、一度着手すればそれが続く固定費の見直しは早めに。退職や子どもの独立など、ライフスタイルの変化に合わせて保険も見直しを。自家用車にかかる費用にもムダがないかチェックしてみましょう」(丸山さん)
2026年は人件費の高騰などにより、銀行口座やスマートフォンの手続きにかかる手数料の値上げが見込まれるという。
「いまや、スマホが苦手な人ほど損をします。銀行アプリを使えば手数料が割引されるなど、お得になるサービスがあるので、家計負担を軽減するためにも、ぜひ活用すべきです」(丸山さん)
国民年金保険料は、「2年度分まとめてクレカ払い」がおすすめ。1万5千円程度の割引になり、クレカのポイントも貯たまる。
「今年こそ、節約の三大NGワード『怖い』『わからない』『めんどくさい』を理由にせず、重い腰を上げる必要があるといえます。
人手不足で、パートやアルバイトの時給がアップし、年齢を問わず働き口は見つかりやすくなっているので、健康維持のためにも、働いて稼ぐことも視野に入れてみて」(丸山さん)
自ら家計を防衛する姿勢が、ますます問われる1年になりそうだ。
