「私が一人暮らしで今も仕事ができているのは、毎日よく歩くことがプラスになっているからだと思います。歩くと脳の血流が増え、記憶や判断を司る部分が活性化されます。ボーッとしていると脳への刺激がありません。歩きながら街の変化を感じたり、素敵な人とすれ違って『かっこいいな』と胸をときめかせたり(笑)。五感で刺激を受けることが脳の若返りには不可欠です」
そう語るのは、『ボケない散歩 83歳、健康を研究する教授の習慣』(アスコム)の著者で、83歳で女子美術大学名誉教授、保健学博士の石田良恵先生だ。歩くことは、年齢に負けない身体づくりの基本だという。
■「歩けないの原因」は足の筋肉量が少ないため
「1日1500歩(距離にして約1キロ、時間にして約15分)歩くだけで、年間の医療費を約35,000円削減できるという試算があります(国土交通省の「日常生活における歩行量(歩数)」に着目したガイドラインによる)。
歩くことで血流がよくなり、冷えやむくみが解消され、代謝が上がります。糖尿病などの生活習慣病予防にもつながり、結果として病院へ行く必要がなくなる。つまり『歩くことは貯金』なのです」(石田先生、以下同)
さらに、私たちが恐れる「認知症」に対しても、“歩くこと”は強力な予防となる。
シドニー大学などの研究(2025年発表)によると、1日平均3800歩歩くことで認知症リスクが2%低下し、7000歩で38%、9800歩でなんと50%も低下するというデータがある。
同様に生活習慣病などに関しても1日7000歩の歩行で、心血管疾患による死亡リスクが47%、がんによる死亡リスクが37%、2型糖尿病のリスクが14%、低下するという。
このように“よく歩くこと”には健康効果があり認知症予防にもなると、わかっているけど「歩くのはちょっと」と二の足を踏む人も多くいると思う。
膝が痛い、転ぶのが怖いなど歩けない理由を挙げるが、「歩けない原因の多くは、足の筋肉量が少ないこと」と石田先生は指摘する。とくに足裏の筋肉群=足底筋群と太もも前の筋肉=大腿四頭筋を鍛えることで安心して歩くことができるという。
「足底筋群は足裏の複数の筋肉の総称で、歩くときにバネのように働いて、地面をぐっと押し返す力を生み出します。足指を動かすときにも使われる筋肉で、足底筋群がしっかり機能すると、ふらつかずに歩けるようになります」
では、足底筋群を鍛えるにはどうすればいいだろうか。
「手足おしくらまんじゅう」が効果的だという。
「『手足おしくらまんじゅう』をするとよいことがたくさんあります。歩行が安定して、ちょっとした段差につまずいたり、バランスを崩してもしっかり踏ん張れるようになり、転倒を防げます。
また、土踏まずのアーチがしっかりして、クッションのように地面からの衝撃を吸収し、関節への負担を軽減します。足裏全体の血流も促されるので、足元の冷えが改善され、むくみの予防や軽減にもなります」
「膝が痛くて歩けない」という悩みを持つ人も多い。石田先生によれば、その原因の多くは太ももの筋肉不足だという。そういう人には「足上げ運動」が簡単でいい。
「膝が痛い人の太ももを触ってみると、筋肉がなくて骨だけのように細い足の方が多い。膝をカバーする筋肉がなければ、痛みが出るのは当然です。
まずはイスに座ってかかとを前に出し、足をまっすぐ持ち上げるだけのトレーニングを試してください。これだけで大腿四頭筋が鍛えられ、膝の痛みが和らぎ、再び歩けるようになります」
石田先生が指導役を務める教室の生徒さんで、90歳になる女性は、当初は車で教室まで通っており、両足がまるで棒のようだったのに、このトレーニングで筋肉がつくと、15分かけてご自宅から歩いてくるようになったという。
「やっぱり自分の足を使わないとダメ。車ばかり乗る人には、『ガソリンは使うけど、あなたの筋肉は全然使ってない。筋肉を使わずにお金を使ってるだけ。歩けば“貯筋”になりますよ』って言ってます(笑)」
“貯筋”とは、運動によって筋肉を貯金のように蓄えようとする考え方。ここで提案しているトレーニングは続ければ確実に“貯筋”できるし、何歳からでも鍛えることができる。
「お金は使えば減りますが、“筋肉”は使えば使うほどたまります」
