原子力潜水艦から戦略ミサイルを発射した中国軍(写真:アフロ) 画像を見る

中国軍によるミサイル発射が、アジア・太平洋地域に大きな波紋を広げている──。

 

7月6日、日本政府が発射実験の再考を強く求めていたにもかかわらず、中国軍は原子力潜水艦から、戦略ミサイルを太平洋海域に向けて発射した。

 

「中国側は『訓練用の模擬弾頭を搭載し、予定海域へ着弾した』、『事前に関係国へ通知しており、国際法と国際慣例に沿った通常の訓練だ』と説明しており、特定の国を標的にしたものではないと強調しています。しかし、日本はもちろん、ミサイルが落下したとされる西太平洋や南太平洋の国々は強い警戒感を示していますね。オーストラリアのアルバニージー首相は、『地域を不安定化させる挑発的な行動だ』と厳しく非難しました」(社会部記者)

 

今回の行動がとりわけ南太平洋諸国の神経を逆なでした背景には、この地域が抱える歴史がある。

 

「冷戦時代、南太平洋は米英仏などによる核実験の舞台でした。その反省から1986年にはラロトンガ条約が発効し、この海域は世界有数の非核地帯と位置づけられています。ところが、今回発射されたミサイルは核弾頭の搭載が可能とみられる兵器でした。しかも、発射地点は原子力潜水艦。

 

たとえ模擬弾頭だったとしても、『非核地帯に向けて核搭載可能なミサイルを発射した』という事実そのものが、多くの島嶼国に強い不快感を与えたのです」(同前)

 

防衛省の情報本部で情報分析官を務めた軍事アナリストの西村金一(きんいち)氏は、今回の発射についてこう分析する。

 

「基本的にはミサイル部隊の練度維持が目的で、政治的な意味合いはそれほど大きくないでしょう。ただ、高市政権との間ではレアアースを巡る発言への謝罪も撤回もなく、中国側としては決着がついていない。多少の『嫌がらせ』という側面はあると思います。

 

中国は、西太平洋を自国の活動海域として『既成事実化したい』という明確な意思を持っています」

 

その流れは以前から続いている。2025年6月には空母「遼寧」と「山東」が沖ノ鳥島や南鳥島周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)で活動。2026年5月には、遼寧を中核とする空母打撃群がフィリピン沖で大規模な行動を展開した。今回の原子力潜水艦からのミサイル発射も、その延長線上にあるという。

 

「実効支配ではなく、“実行支配”の実績を積み重ねようとしているのです」(同前)

 

近年、中国による軍事活動が目立っている。2024年には南太平洋の公海へ向けてICBM発射実験を実施。2025年にはオーストラリアとニュージーランドの間にあるタスマン海で実弾射撃演習をおこなうなど、活動範囲は着実に広がっている。西村氏は、日本も対応を急ぐべきだと指摘する。

 

「中国海軍を抑止するには、攻撃型原子力潜水艦の整備が不可欠です。通常型潜水艦では広大な西太平洋で継続的に活動することは難しい。少なくとも6隻体制を早急に整備する必要があります」

 

一方、日本政府の動きは鈍い。中国当局から防衛省に「潮岬沖へ宇宙ゴミが落下する可能性がある」との連絡があったのは5日。その後、6日にはミサイル発射の通知も届いた。

 

「政府は中国に抗議したものの、高市首相をはじめ関係閣僚が今回の発射の狙いや今後の対応について本格的な協議を行った形跡は見当たりません。国会正常化を巡る与野党協議に追われ、安全保障問題に十分な時間を割けなかったのでしょう」(永田町関係者)

 

西太平洋では、中国の軍事行動が新たな段階に入りつつある。周辺国が相次いで危機感を強めるなか、日本だけが内向きの政局から抜け出せていないとすれば、将来的なその代償は決して小さくないはずだ。

出典元:

WEB女性自身

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