近年問題視される医療のリソース不足。単なる人数ではなく、「支える人口に対してどのくらい医師がいるか」を見てみると、各都道府県で意外な差が――(写真:nonpii/PIXTA) 画像を見る

昨年秋ごろ、秋田県内の施設で膵臓がんの手術の一部が2カ月待ちとなる事態が起きていることが報道された。限りがある、複雑で高度な手術を行える医療施設に患者が集中したため、一定の待機時間が発生し、2カ月待ちになったというのだ。

 

秋田大学大学院医学系研究科消化器外科学講座の、有田淳一教授が解説する。

 

「麻酔科や手術部など関係各所の協力があり、現在は進行がんの患者さんの手術をお待たせすることはなくなりました。しかし秋田で起きたことは、今後、ほかの地方都市でも起こりうることだと予測しています」

 

手術待ちの大きな要因となるのは、“医師不足”だ。なかでも全国的に「消化器外科医」の不足は深刻で、日本消化器外科学会によれば、65歳以下の会員数は2023年に比べ、2033年には26%減少、2043年には50%減少すると予測されている。

 

がんの死亡原因としてトップに君臨する胃がんや大腸がんを治療する、要の科だが――。

 

「若い医師にとっては“コスパが悪い”と捉えられています。労働時間が長いため、自分の時間が確保できませんし、手術が終わっても消化管穿孔などを起こすリスクがあるので、緊急の呼び出しが多いのが現状。やりがいがある一方、命にかかわる症例が多いためストレスもあります。しかも給料は他科と変わりません」(有田教授)

 

秋田県で専門医研修を受けた医師のうち、外科を選んだ人数は、2008年には10人いたが、2024年は2人、昨年は4人。今年は学生リクルートに尽力した成果もあり8人であったが、そのなかから心臓血管外科や乳腺外科、消化器外科などに分かれていくので、医師の確保は簡単ではない。

 

「以前は主治医制だったため、重篤な患者を担当すると、土、日も休むことができませんでしたが、現在はチーム制を導入して、当番医が診察にあたるので休みを確保しております。こうした働き方改革を進めたこともあり、130人強の医学部生のアンケートでも、当科に興味を持ってくれた学生が20人もいるようになりました」(有田教授)

 

労働環境の改善で明るい兆しも見えてきたが、全国では依然として医師不足の影響が出てきている。

 

静岡県の調査では、後継者不足で県内の3割以上の診療所が閉院を視野に入れていることがわかった。串間市民病院(宮崎県)では、相次ぐ医師の退職で、この4月からの夜間・早朝の救急受け入れを休止した。

 

年間200回も飛行機を乗りこなし、全国の僻地医療に従事するフリーランス医師の渡辺由紀子さんが語る。

 

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