ダイエットをしても、なかなか痩せられないとお悩みの方で「遺伝だから」とか「体質が」と、諦めかけている人はいませんか?もしかしたら、その原因には、腸内細菌が大きく作用しているかもしれません。

 

「さきごろ、アメリカ感染症学会が、興味深い報告を発表しました。それは感染症による下痢の治療として、他人からの『便移植』をした女性患者が、施術後、急に太りはじめたというのです。どうやら、その便を提供した人が肥満だったから、患者も太ったのだということでした」

 

そう語るのは、順天堂大学教授の小林弘幸先生。「便移植」とは、おなかの腸内細菌を入れ替える治療法。わかりやすく言うと、健康な人の便そのものを移植し、腸内環境を整えようとする方法だ。

 

日本ではまだなじみがないが、欧米では、「便移植」が潰瘍性大腸炎や下痢を引き起こす感染症の治療法として、すでに導入され、改善効果を上げている。

 

「その報告では、移植後、3年間で女性患者の体重が20キロも増加してしまったのは、『便移植』により腸内環境のバランスが大きく崩れ、彼女の代謝システムが弱くなったからと指摘しています。これまでも、太っている人は、腸内環境が悪いという研究が数多く行われていました」

 

このコラムでも、以前、ふつうの体格のマウスと肥満マウスの腸内細菌を取り替えたところ、ふつうのマウスも太ってしまった、という実験を紹介したことがあった。

 

「今回の報告は、人間でもそれが実証されたことを意味しています。ダイエットの効果が出ない理由が、腸内細菌と関わっているとしたら、高価な器具を買ったり、過酷な運動をしたりするのは愚の骨頂です。まずは、自分の腸内環境を整えることから始めたほうがいいでしょう」

 

私たちの腸の中には、100兆個ものさまざまな菌がいて、種類ごとにすみ分けしている。大切なのは菌のバランス。善玉菌だけあればいいというものではなく、善玉菌が悪玉菌よりも、少し多いくらいという絶妙なバランスが適しているという。

 

「ところが善玉菌の代表である乳酸菌やビフィズス菌は、体外に排泄されやすい性質がありますので、より善玉菌を腸に取り込む必要があります。効果的で簡単な方法は、ヨーグルトや漬け物を食べること。さらに善玉菌のエサとなるオリゴ糖や食物繊維を豊富に含んだバナナや大豆、納豆、アボカドなどもあわせてとるとよりいいでしょう」

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