「糖質制限に加えて適量の『MCT(中鎖脂肪酸)オイル』を飲めば、筋肉は落とさず脂肪だけを狙って落とすことができるんです。運動をしなくてもOKですし、空腹感に苦しむこともありません。ダイエットについての考え方が、ガラッと変わりますよ」
そう話すのは、がんの食事療法として「畠山式ケトン食」を考案した整形外科医の畠山昌樹先生。その食事療法を自身で試していくなかで、半年で15キロの減量に成功。がんの治療だけでなくダイエットにも効果絶大であることを証明した。その内容をまとめた著書『驚異のMCTオイルダイエット』(幻冬舎)が、大きな反響を呼んでいる。
「このダイエットの基本は、米やパンなどの炭水化物、すなわち糖質を主なエネルギーとしている体を、ケトン体をエネルギーとする『ケトン体質』に変えること。そもそもダイエットの大敵である空腹感は、糖質の取りすぎが原因なんです」(畠山先生・以下同)
糖質の多い食事を取ると、体内では血糖値が急上昇。上がりすぎた血糖値を抑えるため、膵臓から「インスリン」というホルモンを大量に分泌するが、今度は逆に血糖値を下げすぎて、その結果空腹感が刺激されてしまう。それだけでなく、インスリン自体に脂肪をため込む働きもあるため、インスリンの過剰な分泌は肥満の原因にもなる。
さらに、体内に入った炭水化物はブドウ糖として吸収され、「グリコーゲン」となって肝臓で貯蔵される。この貯蔵庫が満タンを超えたとき、余ったブドウ糖から脂肪が作られるのだ。
「炭水化物を取ってから6〜12時間ほどして貯蔵されたグリコーゲンが減ってくると、その貯蔵量を増やそうと、さらに炭水化物を欲するようになります。つまり、炭水化物を食べれば食べるほど、おなかがすくという悪循環に陥るわけです」
そこで今、糖質に代わる最適なエネルギーとして注目されているのが「ケトン体」だ。ケトン体とは「脂肪酸」を分解して作られる物質。これをエネルギーとすることで、生活習慣病など、さまざまな体の不調が改善することが明らかになってきている。
「糖質制限ダイエットによりブドウ糖が枯渇状態になると、メインのエネルギーとして自動的にケトン体が使われるようになります。ケトン体質になると体内の脂肪を燃やしエネルギーに変換するようになるので、効率よく痩せることができます。満腹中枢を刺激し食欲を抑える働きがあるため、空腹感を感じません。わかりやすい例は、冬眠中の熊。冬眠に入って食べなくなると、体はケトン体質になり冬眠前に蓄えた脂肪をエネルギーとして使います。食べなくとも空腹を感じず、春まで眠っていられるのはケトン体のおかげなのです」
しかし畠山先生は、脂肪だけを落としてきれいに痩せるには、糖質制限だけでは十分ではないと指摘する。
「確かに糖質制限をするとブドウ糖が減り、ケトン体の血中濃度がわずかに上がります。しかしケトン体がメインエネルギーになる前に、ブドウ糖の代わりとして筋肉のもととなる『アミノ酸』を使って代謝を続けてしまう。これでは体の基礎代謝を上げてくれる筋肉まで落としてしまうことになります。脂肪だけをピンポイントで落とすケトン体質になるには、アミノ酸から構成されるタンパク質の取りすぎを避け、『中鎖脂肪酸』を多く取ることが必要です」
そこで登場するのが、中鎖脂肪酸100%のMCTオイル。中鎖脂肪酸とはケトン体を大量に作ってくれるもので、さらに短時間で体が吸収、分解してくれるので脂肪として体にたまりにくい性質がある。ココナツオイルはその60%が中鎖脂肪酸であることから一躍注目を浴びるようになったが、ケトン体質になるには中鎖脂肪酸100%のMCTオイルを使うのがより効果的。
「MCTオイルダイエットでは、MCTオイルを無糖の豆乳に混ぜて1日4回摂取、オイルを含めた1日の総摂取カロリーを1千400キロカロリー程度に抑え、3食すべてで糖質制限を行います。脂肪だけを燃やし筋肉は消費しないので、タンパク質は1日25〜50グラム程度でOK。一見ストイックなダイエットに感じますが、ケトン体効果で空腹を感じることがなくなるので、『うっかりお昼を食べ忘れた』という人もいるほど。つらくないので長期的に続けられ、体重は1カ月に2〜3キロずつ減っていきます。冷え性、生理痛、便秘の改善など、悩んでいた体調不良も解決しますよ」