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「おかずの品数は多いほうが実はラク」

 

一汁一菜が叫ばれるこのご時世、上の言葉に違和感を感じた人も多いことだろう。しかし、これにはきちんとした理由がある。一皿だけ作るのは一見簡単そうに見えるが、実は技術のいること。たとえば酢豚。豚を先に揚げて、餡を別に作ってようやく一皿になるなど工程の多さに大変な思いをしたことのある人も多いはず。それよりも肉を焼いて野菜は炒めるなど、それぞれ別の料理として簡単に調理したほうが案外手間もかからないという。

 

こうした料理の常識を優しく解きほぐしてくれる言葉で溢れているのが、上田淳子著『子どもはレシピ10個で育つ。』(光文社刊)だ。著者の上田さんは、パリのミシュラン星つき店などで修業したのちに日本で活躍を続ける料理研究家。仕事をしながら、2人の男児を育てあげた上田さんならではの料理術がたくさんつまっている。

 

とんかつを作ろうとしたときに、「とんかつ レシピ」と検索したことのある人は多いはず。しかし、上田さんは「そうやって検索結果のレシピを見ながら作っていると、そのメニューだけしか、さらには検索した先で見つけた特定のレシピでしか作れるようになりません」とレシピ偏重の考えに釘を刺す。

 

だが冒頭のようにそれぞれの食材の簡単な調理法を知っていれば、冷蔵庫の残りものを使って手軽に料理できる。レパートリーも自然と増える。そんな人こそ、料理上手で自分にも優しいのでは?という上田さんの提案に目からウロコがこぼれる読者が続出しているという。

 

「レシピ10個で育つ」というタイトルだが、本書にレシピはあまり載っていない。《唐揚げは最強の時短料理》《困ったらとりあえず肉を焼く》《野菜の切り方は自分で決めていい》《今日の献立=自分が食べたいもの》《つくりおきも家族にとっては残りもの!?》など、ここに書かれているのは日常をちょっとラクにしてくれるアイデアの数々だ。

 

楽しいはずの料理が、「家族のために頑張らなきゃ」と重荷になってしまっている人も多いはず。しかし、上田さんは「毎日そこそこの料理を作り続けることが大切」とうったえる。大事なのは自分を労りながら継続していくこと。どこまでも誠実な言葉に溢れた本書は、あなたにとってかけがえのない“日常のレシピ”になってくれることだろう。

 

「子どもはレシピ10個で育つ。」
https://www.amazon.co.jp/dp/4334950523/

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