「薬草とは、その名のとおり、薬用となる植物。地上に出ている茎や葉を指してハーブと呼びますが、根や実、皮など、そのすべてを含んだものです。薬草の歴史は古く、“西洋医学の父”といわれるギリシャのヒポクラテス以前から、ヒトの健康を支えてきました。だから、私たちは本能的に、どの薬草を食べれば体にいいのかをかぎ分ける能力が備わっているはずなんです。もちろん日本でも、薬草は昔から暮らしや文化のそばにありました。たとえば、家族の健康を願ってお正月に飲むオトソには、解熱作用のあるニッケイ、せきやタンを抑えるキキョウなど、体にいい薬草がたくさん使われていますし、ほかにも胃腸の疲れをとる七草がゆ、ドクダミ茶、ヨモギもちなど、挙げたらきりがありません」
そう話すのは、好きが高じて薬草を仕事にした新田理恵さん。なぜ、今また薬草が注目を集めているかといえば、“地域の食”が見直されてきているからだという。
「世界的な流れでもあるのですが、『身近にこんなおいしいものがあったのか!』と、グローバル化が進むなかで忘れ去られてきた食材や食文化が再発見され始め、そこには必ずといっていいほど、薬草が関わっているんです。昔から食べられてきた理由は、その土地で生きるヒトの体に必要だったからであり、当たり前のことなんですよね。“苦い”イメージが強いですが、味わいも香りもじつにさまざまで、それがあるからこそのおいしさになっています。私が日本の薬草にこだわるのは、同じ気候風土で育ったものが、やはりいちばん自分の体に合うから。とり入れてみると、じわじわと体が変わってくるのを感じます」
体によくておいしいのなら、もっと知りたくなるというもの。
「コロナ禍で、家での暮らし方や自然のよさ、あるべき姿などが見直されているので、今後ますます薬草の人気は高まっていくと思います。勝手に摘んではダメですが(笑)、道端にも生えているし、ガーデニングセンターに行けば、簡単に手に入ります。繋殖力も強く、育てるのも難しくありません。広いスペースがなくても、キッチンやベランダでも育てられるので、ぜひ試してみてください」
「女性自身」2020年7月7日号 掲載