女優アンジェリーナ・ジョリー(37)が両乳房の全摘手術と再建手術を受けたことを公表し、衝撃が走った。母親が乳がんと10年間もの闘病を続けたこともあり、自分もがんになる可能性が高いのではと、遺伝子検査を受けたところ異常が見つかったのだという。
乳がん予防のためとして乳房を切除したことは、日本の女性たちも大きな関心を抱いたようだ。アンジーはこの切除手術で乳がんになる確率は87%から5%に低下したという。乳がん検診、乳腺外科のベルーガクリニックの富永祐司院長は言う。
「遺伝子検査は、採血だけでできます。BRCA1とBRCA2というがん抑制遺伝子の異変を見つけるものですが、この遺伝子のどちらかに異常があると、将来的に乳がんや卵巣がんになる確率が高いといわれています」
BRCA遺伝子のどちらかに異変があると、ない人と比べて乳がん発症のリスクは10〜20倍になるという。臨床検査会社・ファルコバイオシステムズに、検査の詳細を聞いた。
「BRCA遺伝子の検査は約7ミリリットルの採血で可能です。DNAの並びを調べるなど時間が必要で1〜3週間で結果が出ます。異変が発見された場合は、乳がんや卵巣がんを発症する確率が最高で80%を超えるといわれています。現在では、日本全国の約80カ所の医療機関で遺伝子検査が受けられます。料金は10数万円から40万円前後。当社では平均して約30万円弱が正規の価格です」
保険は適用されないので検査費用はかなり高額だが、検査数は倍々で増加しているという。希望者は急増しているのだ。BRCA遺伝子検査の有効性について、栃木県立がんセンター技幹で臨床遺伝専門医の菅野康吉博士に、解説してもらった。
「がんの9割は中高年に発症し、生活習慣の改善やがん検診が予防に有効とされています。これに対して遺伝性のがんは、若い年齢で発症する、複数の部位に繰り返し発症する、家族に同じようながんが認められる、などの特徴があり、通常のがん検診だけでは早期発見や治療が難しい場合があります。そこでアンジェリーナさんも行ったBRCA遺伝子検査が有効になるわけです」
日本でも急増する乳がん。そのリスクは、すべての女性が避けられない問題なのだ。