「腰痛治療というと、温熱療法と痛み止めを思い浮かべる人が多いはず。でも実際は劇的に進歩しているんですよ」
こう話すのは、神経内科医で作家としても活躍する米山公啓先生。腰痛といっても慢性腰痛、椎間板ヘルニア、ぎっくり腰などさまざま。しかし「腰痛の9割は原因不明」(米山先生)だというのだ。
腰痛に関して、こんなエピソードがある。ある国際整形外科学会にあつまった20数人の専門医が診断テストを兼ねて、全員MRIを撮って、それぞれが画像診断してみた。すると8割以上が椎間板の突出が見られたが、腰痛を訴えている医師は1人もいなかった。医師たちは「画像診断だけだとしたら、みんなヘルニア患者だ」と苦笑いだったという。
「このように腰痛の診断は本当にむずかしい。じつは画像はあまり当てにならないということです。しかも一口に整形外科といっても、ねんざ、骨折など分野は多岐にわたり、腰痛をきちんと診断するにはとにかく脊椎の専門医にかかる必要があります」
これをふまえて、米山先生が腰痛治療に向かない整形外科を見分ける5カ条を挙げてくれた。
【1】患者の腰部を丁寧に触診せず、X線写真やMRI画像で診断する。
【2】温熱治療と痛み止めで様子を見たがる(脊椎の専門家がいればもっと細かく診断してくれるはず)。
【3】治療を始めて3カ月たっても痛みが引かない(椎間板ヘルニアでもきちんと治療すれば通常3カ月で痛みは治まる)。
【4】「手術をしても成功の確率は五分五分だ」という(現在、椎間板ヘルニアの術後、満足度は9割以上になっている)。
【5】脊椎の専門医がいない。
「信頼できる脊椎専門医は問診と触診に時間をかけ、本当に画像に出ているヘルニアが腰痛の原因かをきちんと見極める。残念ながら、こうした専門医は少ないのが実情です」
米山先生によれば、医師の間でも、優れた脊椎専門医の情報は少なく、かかりつけ医に相談しても情報はなかなか得られないとか。
「自分で診察してもらいたい医師をインターネットや書籍、口コミなどで探し、かかりつけ医(内科医でもOK)にその医師宛の紹介状を書いてもらって受診するしかありません。紹介状さえあれば、医師もきちんと対応してくれるはずですよ」