「イギリスには、『笑いは最良の薬』ということわざがあります。笑いが、がんをやっつけるNK細胞の働きを活性化させることは以前お話ししましたが、効果はそれだけではありませんでした!」
そう話すのは順天堂大学教授の小林弘幸先生。小林先生によると、アメリカのロマリンダ大学では、かねてから笑いと健康に関する研究が重ねられていたが、今年、お年寄りの記憶力との関係も明らかになったという。研究では、高齢者を大きく2つのグループに分け、片方にはお笑い番組を見てもらい、片方には見せずにおとなしくしてもらった。
「その後、全員の記憶力テストを行ったところ、お笑いを見たグループは見ていないグループよりテストの成績がよく、唾液中のストレスホルモン『コルチゾール』の値も低いという結果になったのです。コルチゾールは、脳の海馬という記憶をつかさどる場所に影響し、記憶力を低下させることがすでに知られています。笑いによってストレスが軽減され、結果、脳にいい影響をもたらしたようですね」
記憶力にもたらす好影響は、まだまだある。笑うことで酸素が取り込まれ、脳の血流がアップ。すると海馬の容量そのものが増えるため、記憶のメモリー容量も増加するのだ。
「認知や記憶に関わる、ガンマ波という脳波にも影響が。笑ったり、楽しい気持ちでいるとき、私たちの脳からはドーパミンやエンドルフィンという快感物質が放出。免疫力も活性化し、これによってガンマ波を刺激。物覚えがよくなっているのです。加齢に伴い海馬は衰えますので、年をとるほど、日常に笑いをとりいれましょう」
笑いの健康効果は記憶力だけではない。同じロマリンダ大学では、笑いがコレステロール値を改善するという結果も発表されているのだ。
「2型糖尿病で高血圧とコレステロール血症のある患者を、やはり「笑い群」と「そうでない群」に2分。ともに、糖尿病の治療や降圧剤などの処方は続けるいっぽうで、笑い群だけが毎日30分以上のお笑い番組などを視聴したところ、1年後、笑い群の善玉コレステロール値が26%も上昇したのです。そうでない群が3%の上昇だったことと比べても笑いがもたらす差は明らか。笑いが、心筋梗塞などのリスクを回避してくれる、かもしれません」
また、筑波大学名誉教授の村上和雄先生の調査でも、糖尿病患者がお笑いを見て大笑いしたところ、食後血糖値が低下した。
「笑いは、まさに最高の薬。無料のうえに、副作用の心配もありませんので、その恩恵は存分に受けましょう」